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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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The Who at Budokan!!

ザ・フーが武道館にやってきた!ヤーヤーヤー!積年の夢だね!本当はキースとジョンのいるザフーが死ぬほど見たかったけど、死んじゃったものはしょうがないよね!そんな贅沢を言っちゃいけないよね!ていうか、その頃もし日本に来てくれていたとしても、私まだガキんちょでザフーのザの字も知らなかったしね!

人は死ぬものである。非常に寂しいことだが。芸術と言われるものたちは、例えそれを生み出した人達がいなくなったとしても、カタチをあまり変えずに 残っていく。デジタル化により、個人のレベルで作品を寸分違わぬカタチで残していくことも可能になった。しかし、人は死んでしまう。だから、見に行けると きに!見に行っておかないといけないんだな、と思う。「フレディのいないクイーンを見たくない」と言う人は多かったが、それでも、ブライアンとロジャーが まだこの世に存在してくれて、しかも日本に来てくれるのだから、私はそれを見たいと思った。それと同じように。ザフーだって、ロジャーとピートがまだ元気 でいてくれるのだから、そしてようやっと日本でツアーをしてくれるのだから。見に行くしかないだろう。

ロジャーもピートも、オッサンを通り越して、おじいちゃんだった。そりゃそうだ。私の親父世代だもんな。思春期の焦燥感の中で繰り返し見たDVD 「Kids are all right」の中の彼ら──腕を風車のように回しながら、衝動そのままにギターをぶっ壊すピート、マイクをぶんぶんと回すロ ジャー──とは、確かに違う。しかし、彼らの音楽への誠実さは、おじいちゃんになっても、全く衰えていなかった。ロジャーの声も、ピートの演奏も、年齢を 考えれば全く、劣化していない方だと言える。あれだけの演奏をする体力と気力を維持していることにも、感動した。何より熱いハートを持っていた、そしてそ れが武道館の端まで伝わった。ちなみに、死んでしまったジョンとキースの代わりである、ベースとドラムも、とても上手で、何よりザ・フーらしかった。ほん の少しの寂しさを感じた点があるとすれば、あの!あの無頼派代表のピートでさえも!!自分の息子をギタリストとしてツアーに帯同していることくらいか。い や、子供は誰にとってもこの世の何より愛おしいものだ。いやー、でも。世襲制って、この世の何よりも強固なものなんだね。

会場は40~50代と思われるロック好きオッサン(しかも一人来場率高し)だらけだったが、誰もが若者のように拳を振り上げ、跳びはね、これまで日 本に来てくれなかった鬱憤を晴らしているかのようであった。小太りだけどモッズだったり、パーマのかかったロン毛+サングラス+黒Tシャツだったり、今時なかなか見れないようなロックおっさん達がたくさんいて、元ロック少年なのであろう、スーツ姿のお一人様サラリーマンもたくさんいて。彼らが一斉に拳を振り上げ汗を飛び散らして弾ける姿は、とても美しく映った。(2008.11.19)