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ねじ子webについて

医師兼漫画家として活動している森皆ねじ子 Morimina Nejiko の公式ブログです。
執筆した書籍や同人誌の情報、イベント参加日程、個人的なおたく活動の備忘録などがあります。

不定期更新ですが、いちおう新刊が出たりコミケに出たりするときはきちんと告知するつもり。予定。たぶん。

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キラメイレッドくんに捧ぐ

まずは、キラメイレッドこと小宮璃央くんが自らの感染を公表した勇気と決意を、私は強く評価します。

彼が感染したことを謝る必要は「まったく」「どこにも」ありません。どこからうつったのだとしても、あなたは我々と同じ、普通の生活をしていただけです。悪いのはウィルスです。ここを絶対に間違ってはいけません。患者さんが謝罪する必要など、まったくない。一切ない。周囲も彼を謝らせてはいけません。今後感染する罪のない子どもたちが罪悪感をもってしまいます。

なぜなら、日本は2020年3月末現在、「全員の検査」を方針としていないからです。それはひとえに「検査数を増やすだけのキャパシティが日本という国の中に『ない』」からです。言い訳はしません。ないんです。病院にも、保健所などの検査期間にも、圧倒的に人数が足りていません。武漢で感染が爆発してから3ヶ月たちましたが、発熱外来もいまだにありません(病院が独自に設置している例はありますが、地域の発熱患者を集約できる大規模なものはありません)。コロナウィルス検査専用の大規模な社会的システムも、まだありません。これは明らかに対応として遅いですが、これらを準備する時間を稼ぐために、検査の条件をつけて医療現場の疲弊を防いでいる側面があったと私は思っています。

つまり、現状では全例を拾うつもりはありません。どこかでたまたまウィルスを拾って、「街中で突然感染者として見つかる」ケースを国も医者も許容しています。それは避けられないリスクとして想定されているのです。たまたま行った駅のトイレ、たまたま行った店のレジ、たまたま乗ったエレベーターのボタン、たまたまさわった電車の吊り革、それからの感染リスクをゼロにできる段階はもう過ぎました。市中で感染する人がいることはもう「織り込み済」です。もう誰でも感染する環境なのです。小宮君はたまたまくじ引きに当たっただけです。だからこそ、少しでもリスクを減らすために外出の機会を減らし、集団で集まって食事したり歌ったり運動したりすることをやめ、鼻や目や口を触らず、こまめな手洗いをすること。それらが推奨されているのです。(もちろん検査「可能」件数はこれからどんどん増やしていかなくてはならないでしょう。増えるんですよね?ここまで現場が時間稼ぎしたんだから検査「可能」件数は増やしていなかったら許しませんよ?)

それはそれとして「なるべく流行の伝播をゆっくりにする」必要は、いまだにあります。それは誰も抗体を持っていない病気だからです。急に感染が拡大すると、その地域の医療機関が麻痺します。「流行の伝播をなるべくゆっくりにする」そのためだけに、クラスター対策班の皆さんは日夜頑張っています。頭が下がります。もう街中のどこで感染してもおかしくないし、自分が感染者でもおかしくない。それも事実。それはそれとして、感染が発見された人からなんとかしてクラスターを見つけ出す必要があるのも、事実です。2つとも必要であり、並行して行われる仕事です。クラスター対策班の仕事を助けるために、彼がどこから感染したか、そしてどこへ伝播しそうか、その調査は(保健所にとって)不可欠です。役者さんも東映の皆さんも是非協力してほしい。絶対に隠蔽などしないでほしい。正直に、包み隠さず話してほしい。それが不幸な感染の連鎖を減らす最もいい方法です。でも、その情報を私達に知らせる必要はありません。保健所の皆さんだけが知っていればいいことです。一般に公開する必要はありません。

感染症は隠せば隠すほど広がります。だから小宮くんとおそらくその御両親(17歳の少年なんですから同意があったはず)と関係者の皆さんが情報を公開した姿勢に、私は最大限の敬意を払いたいのです。日本には穢れの思想があり、病気や病気を連想させる事象を忌み嫌う風習があります。コロナウィルスが流行してから、医療従事者とその家族が科学的根拠のない差別を受けた事例は枚挙に暇がありません。きっとコロナウイルス感染者とそのご家族も、周囲からいわれのない差別や風評被害を受けてしまうのでしょう。それでも、感染を公表した勇気を私は買いたい。その一点だけをもってしても、あなたは私にとってヒーローです。

絶対にやめてほしいのは、放送をやめてしまうこと、そして彼を降板させることです。それだけは本当に絶対にやめてください。番組に穴が開くというのなら、再放送でもいいし劇場版の放送でも構いません。なんとか引き伸ばして、絶対にこのままのキャストでキラメイジャーを続けてほしい。いくら中断があっても構いません。なんなら先日の劇場版リュパパト&キラメイをテレビで放送してくれないかな?テレビで髪が伸びた初美花ちゃんが見たいんだけどな!?うふふ♪(完全な私情)キラやばなラストダンスもつけてね!いくらでも手はあるのだから、小宮くんはまず元気に復帰すること。全国で君を心配しているちびっ子たちに、コロナウィルスに打ち勝った姿勢を強く見せてほしい。

いま、子どもたちは言いしれぬ不安に包まれています。明らかに世の中の様子が変わったことに、4歳の子どもでも気付いています。首都圏で続く土日の自宅待機は、子どもたちにとって無限に続く廊下のように長く感じることでしょう。永遠に続く地獄です。毎週遊びに行っていた遊び場のどこにも行けません。ショッピングモールも行けない、ディズニーランドも行けない、ヒーローショーも行けない、おじいちゃんおばあちゃんの家にも行けない、いつもの友達にも会えない、児童館は閉まってる、図書館さえ閉まってる、公園をそそくさと散歩するだけ。いったい何が起こっているのか、小さい彼らにわかるはずもありません。でも、お父さんとお母さんはずっと何かについて難しい顔で話している。ちなみに小学生長男はもう様々なことがわかっているので、私がネットサーフィンしていると(COVID-19の毎日あがる論文を眺める必要がある)「ジュール、大丈夫かなあ?」って聞いてきます。一日一回必ず。私はざっと検索し、悪いニュースがないことを確認してから「大丈夫だよ」と答えています。

家から出られない長い長い土日のど真ん中、日曜の朝に、ヒーローたちが来てくれる。プリキュアが来る、仮面ライダーが来る、戦隊ヒーローが来る。強くてかっこよくて優しいヒーローとヒロインの映像を届けてくれる。このルーティンに私と私の家族がどれだけ救われているか。どれだけの子どもたちが夢中になり、どれだけの親が息を抜いてホッとするか、わかりません。彼らは間違いなく子どもたちにとって、そして親である私達にとって最高のヒーローなのです。

「コロナウィルス」という単語を、4歳児ももう覚えてしまいました。半年前までは、医者である私でさえ「冬に流行る風邪のウィルスの一つ。ごくたまに変異してSARSやMERSになる」程度の認識だった微生物の名を、いまや世界中の誰もが知っています。「〇〇に行きたい」と彼が言い、「そうだね、でも今は行けないんだ」と私が答えると、彼は「コロナウィルスのせい?」と答えるようになってしまいました。そう教えた覚えはないのに。

「みんなのヒーロー・キラメイレッドがコロナにかかったけど、元気に帰ってきた!コロナウィルスをやっつけたんだ!」……それだけで、どれだけの数の子供たちが救われ、勇気づけられるか。こんなにわかりやすい「勝利」の描写ってないでしょう。子どもたちの感じている生命の根源的不安が、シンプルに晴れる。きれいに解消する。それだけのパワーがある。


私の子供は、4歳児のほぼ全てがそうであるように、手を洗うことがあまり好きではありませんした。特に石けんを使うのが嫌いでした。彼なりに色々と理由はあるのでしょう。「水が冷たくていやだ」「おうちに帰ったらすぐにだらだらしたいし、遊びたい」「以前は水だけで手を洗えばよかったじゃないか、どうして急に石けんを使わなくちゃいけないんだ?おかしいだろ」などなど。気持ちはよくわかります。どうしてここ1ヶ月で急に液体石けんで厳重に手を洗わなくちゃいけなくなったのか、意味がわからないでしょう。当たり前です。でも、もう何が何でも、外から帰ってきたら!すぐに!石けんで手を洗わなくてはいけないのです。そこに理屈はありません。とにかく、すぐにやらないとダメなのです。

彼を説得するのは苦労しました。本当は、家の中でなにかモノにさわる前に、洗面所に引きずってでも連れていき、無理矢理にでも腕をつかんで手を洗わせたい。医学的にはそれが圧倒的に正しい。長い目で見れば彼を守ることになる。でも、それじゃダメなのです。無理矢理ではダメなのです。最初に力ずくでやらせると、次はそれがトラウマになってさらに嫌がるようになります。ますます手洗いを嫌いになり、将来的には必ず失敗します。なんとしても、「嫌い」にならずに、手を洗わせないといけない。でもすでに一刻の猶予もない。一回だって手洗いはサボれない。彼はもう泣き出しそうです。そこで私の口からとっさに出たセリフはこれでした。

「キラメイジャーも、ゼロワンも、手を洗おうって言ってたでしょ!」

彼ははっとして、泣き止み、手を洗い始めました。それから、手洗いに苦労したことはありません。

いいですかキラメイレッドくん。

君は、母である私よりも、医者である私よりも、最も科学的に有効な方法で、私の息子の健康を守ってくれています。
これは、あなたにしかできないことです。
キラメイレッドに選ばれたあなただけが持つ力なのです。
あなたは、全国の未就学児童の健康を、誰よりも医学的に正しい方法で守っています。
それがあなたたち、ヒーローの持っている特別な力です。

次は、あなたが、あなたたちが、番組関係者すべてが、コロナウイルスという敵に打ち勝って元気に帰ってくる姿を、子どもたちに見せなければなりません。
見せてください。あなたたちならできるはずです。


※「手を洗おう」啓発動画、一回しか流してくれなかったけど、できれば毎週流してほしい

私の子供は、4歳児のほぼ全てがそうであるように、マスクを付けることが好きではありません。あのWHOとCDCが4月2日に「無症状者もマスクすることがCOVID-19感染の拡大抑制に一定の効果がある」と方針変更しました。驚くべきことであり、歴史的な変節です。今後は日常生活において「入場時マスク必須」「マスクがないと、入ることすらできない場所」が増えていくと予想されます。私は、これから4歳児にマスク着用を教えていかなくてはいけない。これはきっと難渋します。


持っててよかった、駐車場代を無料にするためにたまたま買ったマスク。子供が嫌がりそうなことは、大好きなキャラクターを利用して導入する。これ育児の頻用テクニックです。「キラメイレッドはコロナに勝ったんだから!大丈夫!これで君もコロナに負けない!」って言いながら慣らしていく予定なので、キラメイジャー諸君は元気な姿を私たちに見せてくださいね。待ってますよ。(2020/4/1)

新刊『ねじ子が精神疾患に出会ったときに考えていることをまとめてみた』発売です

こんなご時世ですが、商業の新刊が2020/03/27に発売となりました。

『ねじ子が精神疾患に出会ったときに考えていることをまとめてみた』

よろしくお願いいたします。

流行に合わせたサイケデリックな書籍デザインを、照林社編集部の皆さんと、ハロヲタ仲間のデザイナーさんが可愛く仕上げてくださっています。

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今回のテーマは「精神」です。
「おや。この人、言動や行動が少しおかしい?精神疾患かも?」と感じる患者さんが現れたとき、医者が頭の中でどう考え、どう診断し、どう行動していくのか。その過程についてイラストと文章で書きました。「手」の技というよりも「脳」の技と言ったほうがいいかもしれません。

いつものシリーズと同様に、この本も「何も知らない研修医が当直させられた、または外来させられたときになんとか対応できる知識」を目指しています。ナースさんなら「1年目ナースが外来や当直で突然遭遇した不測の事態にも、なんとか対応できる程度の知識」が目標です。

「医学」という学問自体の初心者・初学者に向けた内容ですから、精神医学や臨床心理学の専門家を目指す人にとっては内容が薄いと感じられることでしょう。「当直をのりきる」以上のことをしたい方は、この本を読んだ後にぜひ専門書にあたり、各疾患の知識をもっと掘り下げていってください。「自分や家族のかかってる病気について詳しく知りたい!」という一般の患者さんや御家族には、講談社の『健康ライブラリーイラスト版』をおすすめします。

精神科の看板をまったく掲げていない場所でも、「この人はどう考えても精神疾患だ……」と感じる患者さんは日々我々医療者の前に現れます。そんなとき、本書の知識が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。(2020/03/28)

※この本は 同人誌『平成医療手技図譜 精神編』と『心療内科編』を合冊して加筆修正した内容になります。

生き残れ 星降る夜に 約束通り必ず会おうよ

おそらく世界中の医療従事者がそうであるように、2020年3月は私の医者人生の中で最もつらい1ヶ月でした。この過酷さはしばらく継続するのでしょう。ひょっとしたら、さらなる波が待っているのかもしれません。

欧米各国の医療従事者への感謝の拍手動画を見ながら私は今日一人で泣きました。
日本国内の拍手の動画は見つけられませんでした。そのかわりに、コロナ患者の出た病院や医療従事者やその子供への差別や偏見の記事は随所で散見されています。

私も夫も医者で、子供は小学生です。彼にはこの1ヶ月たくさんの苦労をかけました。彼は一言も文句を言わず、毎日変わる私達の予定にあわせてくれました。私の自慢の息子です。

日本において3月は年度末、4月は年度始まりです。新入や人事異動は予定通りやってきます。それらを決めた当時とは病院の様相が大きく変わってしまったにも関わらず。
感染の渦中にいる病院に入っていく人もいれば、出る人もいるでしょう。みんな様々な思いがあると思います。

正直に言うと私は少し疲れています。頑張りすぎてはいけないなぁと思います。
医療者の皆さん、みなで健康で、生き延びましょう。

来年はお花見ができたらいいな。
ディズニーランドにも行きたいな。
モーニング娘。のライブにも行きたいな。

(2020/03/24)