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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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エキスパートナース2021年6月号・7月号 新型コロナウィルスワクチン特集

エキスパートナース2021年6月号

エキスパートナース2021年6月号にて、新型コロナワクチン接種開始にあわせ、ファイザーの新型コロナワクチン・コミナティの扱い方と筋注の手技について解説させていただきました。

多方面からご好評いただき、各地のワクチン接種会場でも利用していただいているようでとても嬉しく思います。

記事を書いた4月中旬は何もかも手探りで、ワクチン接種業務に手をあげた病院の中の人すらも「本当に来週からワクチンが届くんですか?どんなのが届くんだろう?」などと言っていたことが思い出されます。

当時、急な取材を受け入れてくださった東京都看護協会さんに改めて感謝いたします。

エキスパートナース2021年7月号


エキスパートナース7月号では、ワクチン接種会場で生じる副反応としてもっとも重要、かつ想定していなくてはらない疾患である「アナフィラキシーと血管迷走神経反射」にいかに対応するか、を描きました。本当は6月号に入れたかったけど、入り切りませんでした。

どちらもワクチン接種業務に従事する皆さんにとって具体的に実行しやすい内容になっているはずです。ご活用いただけますと幸いです。

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さて、もっぱら報道されている、かつ患者さんが最も口にする副反応は「ワクチン二回目接種後の発熱」のようです。生命予後に関わる副反応ではないので今回の特集では触れていませんが、これについて少し書きます。

実は私も二回目接種の翌日、頭痛がして、全身の筋肉痛が出て、発熱しました。そして、それがすごく恐ろしかった。自分の体がどうなっちゃうのか、とても不安になったのです。「未知の薬」による「未知の体験」が自分の身におこっているからだと思います。

私は2回目接種の時、問診してくれたドクターと「どのくらい熱出ます?」「うーん、うちの職場では1割くらいの人が1~2日寝込みましたかね」「あーそんなもんですよね。私の周りもそんな感じです」なんていう会話をのんきに、さも他人事かのように話していたのです。

つまり私は客観的に知っていた。ファイザーの「二回目接種後7日以内に38℃以上の発熱が11~16%」という報告を4月にはすでに見ていた。2~3日で解熱することも、それ以上続いたら別の疾患を考えるべきことも、ぜんぶわかっていた。それでも、熱が出て全身が痛くなった自分の体の変化が恐ろしかったのです。

自室で一人寝ていた私は不覚にも「ここで一人で死にたくない!」と思ってしまい、オンライン授業していた息子の部屋に行き、隣で寝かせてもらいました。すると私は無事に寝つくことができ、起きたら、熱が引いていた。アセトアミノフェンすら飲まずに。つまり私の発熱という副反応はとても「軽かった」のです。

初めてのウィルス、初めてのワクチン、初めての副反応。自分の体に起こる未知の体験は「たとえ知識があっても」恐ろしいものであると、私はこのとき初めて実感しました。一般の皆さんが怖がるのも当たり前であると。私は自分に副反応が降りかかってくるまで、本当にはわかっていなかったのかもしれません。

そしてそれでも私は、「ワクチン接種が怖い、迷う」という相談を受けるたびに「怖いのはよくわかります。私も怖かったです。熱も出ました。それでも、今回は受けましょう。受けてください」と話しています。それが禁忌ではないかぎり。(2021/6/30)