ねじ子web

医師兼漫画家 森皆ねじ子

ねじ子のLINEスタンプが発売されています

2012年俺コンランキング・楽曲編

※俺コンランキングとは2012年に見たり聞いたりしたものの中から勝手に自分内でランキングを付けたもの。独断と偏見に満ちている。しかも必ずしも 2012年に発表されたものではなかったりもする。

昨今のオリコンランキングは単なる握手会ランキングになり下がったため、一瞥もしなくなってしまったねじ子です、こんちくわ。でも俺コンランキングはやります。

2012年俺コンランキング・楽曲編。

1位 One・Two・Three / モーニング娘。

One・Two・Three (Dance Shot Ver.)

ねじ子が今年最も多く再生した動画。300回は再生した。発売から半年経った今でも毎日聴いてる。これまでのつんく♂の手癖から一新した編曲と、EDM(Electronic Dance Music)路線。8人もの新メンバー、新しいセンター、希望に満ちた表情。たおやかにグループを支える、世界一の美少女にして腹黒の知将・道重さゆみ。完璧な自己プロデュース能力と歌唱力をもった、リアル惣流・アスカ・ラングレーこと田中れいな。粒ぞろいだ。今のモーニング娘。は、最高に楽しい。モーヲタをやっていてこんなに心から楽しいのは『恋愛レボリューション21』の頃以来だ。それから先は、卒業と決別と栄光の喪失の歴史ばかりが続いていたから。過去の栄光を知らない新しいメンバー達による新生モーニング娘。は今、一点の曇りもなく楽しい。

モーニング娘。黄金期の名曲『Say Yeah!もっとミラクルナイト』の間奏で、辻加護が「青春を謳歌する諸君たちに告ぐ!我々は完全に楽しんでいる!さあ、諸君たちもともに楽しもうではないか!」と宣言していた。そう、アイドルを応援するっていうのは、その感覚が一番重要だ。私は今、モーニング娘。を完全に楽しんでいる。今年のモー娘。の楽曲はシングル・アルバム・カップリング含めて全部良かった。つんく♂も長く変化がなかったプラチナ期がやっと終わった開放感に満ちていることが曲の端々から感じられて、大変ほほえましい。

2位 タイムトラベル / スピッツ

ドラッグなしでも空を飛べる一曲。1999年の11月9日~10日に渋谷で行われた松本隆トリビュートライブ・風待ミーティングで歌われたこの曲が大好きだった。

13年たって、新たにスピッツがカバーし、CD音源化したことを大変嬉しく思う。是非ライブで聴きたい。

3位 chili pepper japones / くるり

くるりの最新アルバム『坩堝の電圧』は最高だった。2012年俺コンアルバムランキングでは文句なしの1位だ(2位はモーニング娘。の『13カラフルキャラクター』です。)

くるりは結成16年目にして、歌詞が変化した。今回のアルバムでは震災と原発をがっつりとテーマにしている。これまで敢えて触れてこなかった、息子のことにも触れている。

震災を機に、既存のわかりやすいイデオロギー――右と左とか、保守と革新とか、資本家と労働者とか、一億総中流とか――が瓦解した。何か大きな会社組織に所属しつつ、同じ政党に投票し、同じテレビ番組を見て、同じニュースを見て同じように感じて(洗脳状態とも言える)、同じ音楽を聴いて、「みな同じような生活を送っているのだ」と誰もが確信している時代は終わってしまった。個人個人が己の財産と生活と健康を維持するために、己の置かれた状況の中で最大限の利益を追求するために生きるしかなくなった。個人がバラバラにさせられてしまったのだ。

日本にも、メッセージソングを歌っている人たちは少数ながらいた。でも既存のメッセージソングは、右派だったり左派だったり保守だったり革新だったり労働歌だったりしたから、震災以降、その言葉はすべて形骸化してしまった。少なくとも私の心には1ミリも響かない。今こそ、岸田君の「物品的に満たされていても乾いた孤独の中で、頭のいい文系男子が一人で考えた」感じのメッセージは、伝わりやすいと思う。政治や思想の色を帯びてもいい。原発の歌だっていい。どんどんメッセージソングを歌ってほしい。正直、これまでのくるりは、歌詞が「不本意な恋愛」や「現実とうまく折り合いがつかない恋人の存在」を臭わせる歌詞ばかりで、共感しにくかったのだ。でも、『坩堝の電圧』の岸田君のメッセージはとても良かった。もっと聴きたい。まぁそんな思想色あふれるアルバムの中で、ねじ子が一番いいと思ったのは、おふざけ楽曲の「chili pepper japones」なんですけどね。テーマは山椒。あの調味料の山椒。『空耳アワー』に出演している役者陣を使ったMVも最高でした。

4位 非公認戦隊アキバレンジャー / 桃井はるこ

いつまでもスーパーヒーローから卒業できない大きいお友達のための特撮番組「非公認戦隊アキバレンジャー」は、ねじ子の中の「日本オタク大賞2012」大賞を受賞しました。特に「グリリバボイス的BL鬼畜攻め」こと緑川光さんの熱演には腹を抱えて笑いました。私の中で彼の地位がまた一つ上がりました。そしてOPを作詞・作曲・熱唱した桃井はるこちゃんは素晴らしかったです。順調に出世してて嬉しい。いつまでも応援しています。

5位  つけまつける / きゃりーぱみゅぱみゅ

きゃりーぱみゅぱみゅの成り上がりっぷりは好きだ。名もない水着ジュニアアイドルから、青文字系の読者モデルになり、自分のファッションセンスだけで「日本のレディガガ」とも言える作品を作り上げた手腕は見事だと思う。Berryz工房の菅谷梨沙子に憧れてるというだけあって、ライブで生歌指向なのも好感が持てる。ま、いろんな所で宣伝されすぎて確かに脳内でステマステマと響くけれど、中毒性の高い素敵なMVだと思います。

6位 桜流し / 宇田多ヒカル

最初に公式MVで公開されたときは、まったく良いと思わなかった。あまりに母性礼賛・生命礼賛・自然礼賛でうんざりしたのだ。ヒカルちゃんは大好きだし、河瀬直美監督も好きだし、奈良の自然も好きだし、出産は本当に感動するものだけれども、それらの食い合わせは良いと思えなかった。

***以下、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のネタバレ含みます。未見の人は注意***

でも、映画館で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のエンディングとして聴いたこの曲は、本当に良かった。三たびグチャグチャになった世界で、またも自分のために唯一の友人が死んでしまった世界で、アスカに罵倒されながら引きずられて歩くシンジ君の心理状況にはドンピシャの音楽だった。私もヒカルちゃんの歌声を聴きながら心の中で叫んだよ、「ああ、16年たってもまた、カヲル君はシンジを救えないのか!『今度こそ、君だけは幸せにしてみせる』んじゃなかったのかよ!ひどいよ!つーか、またかよ!」と。ああヒカルちゃん、君の曲に母性礼賛・生命礼賛は似合わないよ。やはり君の曲に一番似合うのは、絶望に彩られた近未来SFの世界だよ。世間の評判は悪かったけど、ねじ子は実写版『キャシャーン』もとても好きだったよ。

7位 READY GO!! / Dream5

Dreamでも、Folder5でもなく、Dream5。でも両者とは全然関係ない、男子一人・女子四人の新しいグループ。既視感が強すぎるグループ名で、かなり損をしていると思う。楽曲のクオリティもメンバーのスキルも、無駄に高い。さすがエイベックスと言えよう。子供番組のタイアップも異常なほど多い。さすがエイベックスと言えよう。でもたぶんこのまま飼い殺しにされる。さすがエイベックスと言えよう。

8位 大人はわかってくれない / 私立恵比寿中学

大サビが好き。歌詞も好き。声も好き。でもあまりに音程が不安定。ねじ子はロック生まれハロプロ育ちなので、どんなに可愛い顔でも可愛いダンスでも可愛い衣装でも、計算され尽くしたギミックや台本が用意されてても、ダメなんです。生歌で歌って踊ってくれないとアドレナリンが出ないのです。エストロゲンも出ないのです。だから私立恵比寿中学の皆さんは、たとえコンセプトが「学芸会」であっても、もう少し生歌がうまくなってくれると嬉しいでしゅ☆ぁぃぁぃ風。(2012/12/30)

※2012年俺コンランキング・ハロプロ編はまた後日。