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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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年末最後の推しごと

12月23日に『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』Gロッソ素顔の戦士公演・第4段の千秋楽を見に行きました。子供と一緒に「推しごと」に行けるなんて、家族にも喜んでもらえるなんて、私は幸せものです。ありがとう工藤。

武道館以来一年ぶりに見る舞台の工藤は、アドリブも冴え、生き生きと飛び回っていました。ふわふわの衣装で快活な少女を演じる工藤を見て、私は『ステーシーズ―少女再殺歌劇』のハム恵を思い出しました。軍用チワワと呼ばれていた頃の工藤。ロリヤクザと言われていた頃の工藤。まだモーニング娘。に数字がついていなかった頃の工藤。全能感にあふれ過剰に張り切っていたあの頃の工藤。

クリスマスイブ・イブだったこともありサンタ帽子をかぶった姿も、「メリークリスマス!」と言いながら客席へ投げキスする姿も、非常に愛らしかったです。当時の娘。舞台で受けていた男役ではなく、年齢相応の可愛い女子として工藤を配役してくれたことが私はとても嬉しい。可愛い女の子を見ると、乾いた心にうるおいが戻りますね。「工藤に会いに行くんだから、きちんとした格好しなくちゃ!汚いおばさんの姿を工藤のきれいな瞳に入れるわけにはいかない!」と思って締切前でヘロヘロだったけどちゃんと風呂にも入ったし。おめかしもしたし。一年最後のよい推しごとができました。

月並みですが、可愛い子が悪役にやられて倒れもだえ苦しむ姿って、なんともいえない高揚感が湧きおこりますね!どきどきしちゃった!これはハロプロのコンサートでは決して味わえない興奮だな!うふ!

私の行った公演には、実はしょこたんとはるなんも見に来ていたようです。気が付かなかった。武道館南1階の関係者席を双眼鏡で覗きながら来場メンバー全員の名前をつぶやいてくれるおたくが山ほどいるハロプロの世界に慣れすぎていました。不覚です。はるなんの卒業公演に行けなかったかったこと(しかも会場には藤子不二雄A先生もいたらしい!同じ空気を吸いたかった!)に私はかなり凹んでいたのだけど、まさかその一週間後に、G-rossoという座席数765席の狭い空間で卒メンそのものとすれ違うことになるとは。しかもそれにまったく気付かないとは。おたくとしての勘も感度も鈍ってるな、私。

2018年下半期のねじ子のオタク活動はさんざんでした。

過去10年推していたアイドルが、女神と崇めていた女の子が、ある日突然容疑者付きの名前で連日トップニュースになり、手錠と麻縄で連行されるやつれた姿をあまたのメディアで毎日見せられたら、精神の安寧を保つのはむずかしくなります。よっすぃが逮捕されたあの日以来、わたしは自分とハロプロとの距離を決めかねています。

愛の燃料タンクに突然銃弾を打ち込まれて穴があいたというか、風船にとつぜん針を刺されたというか、とにかくあれ以来「ハロプロを好きだ」という気持ちを膨らますことがむずかしくなってしまいました。MVやライブを見た直後は「やっぱりいいな!」と思えるんですけど、その気持ちがなかなか続かない。川の底の小石のようにすばやく流れていってしまう。

なんなら私は、彼女がマクドナルドの仕事を休んだニュースをお昼休みの休憩中に見て、彼女や息子さんの体調を心配すらしていたんだよ。それなのに。ばかみたいだ。

 

 

傷口を自ら晒していく圧倒的なスタイル。(新潟にはNegiccoがいるよ。もう15年間も真摯に活動を続けているよ。曲も手抜きなしで最高だよ)

医学部受験のとんでもない女性差別が明るみになった時期とそれはちょうど重なっていて、私は精神的にくたびれてしまい、各種メディアから断絶した生活をしばらく送りました。そうしないと今ここで立っていることすらできなくなってしまうからです。

そんな私の心の均衡を保ってくれたのは毎週日曜朝の『HUGっと!プリキュア』と『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』でした。ルパパトは脚本とキャラ設定が非常によくできています(サイレンストライカーの扱いとスーパールパンXという存在の矛盾以外)。工藤のおかげで私はなんとか健康に年を越すことができました。

ニチアサ適齢期男子の母でもある私は、勝手にルパレンのおもちゃやグッズを買いまくりました。ああ買ったさ。山ほど買ったさ。ダイヤルファイターもVSチェンジャーもマグナムもソフビもお菓子もふりかけもキャラデコケーキもフィギュアもブルーレイもswitchのゲームもユニクロのヒートテックも買ったさ。子供が別に欲しがってないものも勝手に買いあさったさ。「じゃあこれは運動会のごほうびね!」とか言ってごほうびプレゼントの機会を勝手に増やして、自分の欲しかったマシンを手に入れまくったさ。「じゃあ病院の待ち時間にこれ読もうね!」とか言っててれびくんやシール絵本も(工藤の写真が載っているものを選んで)買いあさったさ。だって工藤のためだもの。もっと言えば、これからハロプロを卒業して女優や声優になりたがる後輩たちのために、道をつなげたかった。「ハロプロ卒業メンバーを起用すれば、ハロヲタがおもちゃを買ってくれる」という実績を作りたかった。お金で買えるルパンイエローのグッズはすべて手に入れたし、ルパンレンジャーのダイヤルファイターはぜんぶコンプしてるし勇動もすべて揃えた。ぬいぐるみもイエローは両方買った。「君はどっちを応援する?」って煽られていたから、確かに警察側のおもちゃはあまり買わなかったかもしれない。

自由な組み合わせで出撃を待つ皆さん

しかしまさか、警察側の武器をすべてルパン側に回す無謀なテコ入れがやって来るとは思わなかった。30話のスプラッシュ温泉回はそんなテコ入れを逆手に取った最高の脚本だったけれど、サイレンストライカーとスーパールパンXのどうにも料理できない凄惨さには心底がっかりした。もう12月なのに心配ビームでキツツキが飛んでたときは先行きが心配すぎてこっちが倒れるかと思った。

それでも、工藤が最初に言っていた通り、ルパパトは「歴代最高の戦隊」になるポテンシャルを今でも十分秘めていると思っている。ちなみに私の中の戦隊シリーズ最高傑作はデカレンジャーとシンケンジャーです。ルパパトは今のところその2つに並んでいます。もちろん「物語は終わって初めて完成する」と真木博士の言ってるとおり、物語は最後まで見なければわかりませんが。年明け後の怒濤の展開を楽しみにしています。

追伸。東映さん、工藤にソロ曲を2曲もくれてありがとう。ハロプロ在籍中は工藤のオリジナルソロ曲はついに最後までなかったけれど(舞台ではあったかも?)卒業したその年に、外部から2曲もソロ曲をフィジカルで出してもらえるなんて。とってもありがたい。東映カレンダーに抜擢されたことも嬉しい。工藤が大事にされていて私も嬉しい。イエローの声の目覚まし時計やグラビアがたくさん出たことも嬉しい。イエローのグッズを買いまくった甲斐があったよ!あったよ!……あったのか?正直わからん!!客には数字が見えないから!でも私は満足だ!(2019/1/15)