2023年 ねじ子の楽曲ランキング(後編) 2位 帰ってきたコーガ様戦 / ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム
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『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』より。前作『ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド』においてコーガ様は謎の大穴に落ちて行方不明になった。いわゆる「ギャグ空間」への退場 で生死不明になったことが、まさか続編につながるとは思わなかった。あの穴が伏線だったとは。実は地下空間があったとは。そこでイーガ団が暗躍するとは。いやー、思ってもいなかったね。世界の広げ方がうまい。地図はそのままで、探索範囲を倍にすることができる。かしこい。地下は怖くて移動がたいへんだけど、探索も慣れれば楽しい。
そしてなんと言っても!この曲には!合いの手があるんだよ!!!!コール!コールだ!やったああああ!コールするぞ!コール大好き!私もイーガ団に入って「はっはい!はい!はい!」って叫びたい!私もイーガ団に入る!あの衣装どこに売ってる?買わせて!
実はイーガ団は、あの社会で馴染めなかったり街から追い出されたり捨てられた人間を救いあげて、元々の種族に拘らず組織に取り入れる 「セーフティネット」の機能を持っている。江戸時代の浪人組織みたいなものだ。ただのならず者集団に見えるが、実は社会にとって必要悪な集団 として描かれているのだ。街の外に出たら一晩で魔物に殺されてしまうあの世界で、拾ってもらえて、役割を与えられ、飯を食わせてもらえているのだから(バナナだけど)そりゃみんなコーガ様を好きになる。この曲のコールからは「コーガ様大好き!」 という気持ちが伝わってくる。だから好き。
3位 フリザゲイラ戦 / ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム
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こちらも『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』から、中ボス・フリザゲイラとの戦闘曲。風をつかさどる街・リトを支配するボスであり、吹き荒れる風を意識した楽曲だ。過去シリーズのリト族の曲のアレンジがふんだんに盛り込まれている。竜巻と猛吹雪が吹き荒れるなか、パラセールで飛び回りながらこの曲を聴く。圧倒的な浮遊感 を感じる。空も飛べそうだ。後半戦になると転調して音階が上がるのもいい。テンション上がるね!
この曲を聴くためだけにフリザゲイラを倒しに行く。そのためにわざわざ地下にも行くくらい、この曲が好きだ。巨体なのに弱点さえ突けばリンゴ3つで倒せるところもいい。
ちなみに前作と共通の音楽の中では『モルドラジーク戦』が一番好きです。敵がダウンするとサビに入る展開が最高に盛り上がる(この動画の1:26)。
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4位 ヒロガリズム / 「ひろがるスカイ!プリキュア」エンディング主題歌
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『ひろがるスカイ!プリキュア』はとても面白かった。史上初のレギュラー男子プリキュア であるツバサくんと、史上初の成人プリキュア である18歳のあげはさんがよかった。
ツバサくんはプニバード族、つまり鳥 である。女児アニメに必須なマスコット要因、かつプリキュアだ。体格は第二次性徴前の小学生低学年くらいで、知能は主人公達と同じ中学2年生くらい。この年齢設定も絶妙である。生々しくないし、フリフリの衣装も着こなすことができる。生足を出しても違和感がない。会話のレベルもあわせられる。見た目と精神年齢が少し離れている(体型は幼いが精神年齢は思春期)が、元々人間じゃないのでそれも無理なく受け入れやすい。
始まる前は「男子プリキュアのレギュラーってどうなん?大丈夫なの?」と少し不安であったが、何の問題もなかった。私の子どもの男子たちはツバサ君を受け入れ、共感していた。きちんとツバサくんに自らを重ねながら見ていた。
そうだ、私もずっと戦隊の女性戦士に自分を重ねていた。「大きくなったらああなりたい」と思ったり、「これはダメだ、あんな大人にはならないぞ」と思ったり、可愛さにキュンとしたり強さに憧れていた。物語の中に自分と同じ属性の登場人物 が存在することは、子どもが物語の中で人生を疑似体験するために必要である。物語の中でいろいろな感情を疑似的に体験し、別れや恐怖も体験して、心の強度を強くする。それは子どもの脳が成長するのに必要不可欠な過程だ。ライダーでも戦隊でもプリキュアでもドラえもんでもクレヨンしんちゃんでも少年漫画でも少女漫画でも若草物語でも赤毛のアンでも偉い人の伝記でも、それは変わらない。
あげはさんが18歳の保育士さんで、ツバサくんを「少年」と呼んでかわいがっているのもよかった。それに対してツバサくんがむっとして「子ども扱いするな」とすねているのもいい。子どもっぽいとか、かわいいとか言われたくないところがいかにも思春期の少年でいい。生意気でかわいい。オネショタの味がする。大きなお友達も大満足である。
赤ちゃんのエルちゃんが「ツバサとけっこんする!」と騒いで「結婚ごっこ」をするのもよかった。結果的に全員と結婚することになってるのもいい。「ごっこ遊び」が大好きな女児、すげぇいっぱいいるもんね……。恋愛未満の愛情である「友愛」 があふれていて、その量も適切だったと思う。
ヒーローガールな宇宙人ソラ・ハレワタールが敬語をずっと使っているのも、ましろさんを大切にしているところも、ましろさんを危ない目に遭わせたくないところもよかった。肉体的に強くあろうとする 女子を真摯に描いたところが、とても好きだ。子どもの頃助けてもらった騎士団長の女性に強く憧れているところ、ロールモデルに近づきたくて頑張り続けるところ、その騎士団長を強さ的には追い抜いてしまうところ、彼女を守りたくても守り切れなかったところ。挫折も、それからの回復も描くところ。肉体的に強くあろうとして努力する女子の等身大の姿として、私は大いに共感した。
空手や剣道を習っている女子は多い。肉弾戦は初期プリキュアからのコンセプトだ。
「女の子だって暴れたい!」
プリキュアシリーズの初代プロデューサーが『ふたりはプリキュア』の企画書に記した名言である。強くあろうと鍛錬していれば必ず突き当たる壁を、女児アニメで表現したことを評価したい。
VIDEO M-1グランプリ × ひろがるスカイ!プリキュア【コラボPR②】
今年一番萌えた映像。「ましろさんが一番グランプリですよね!」「ちがうよ~」も最高。ソラちゃんはスカイランド人なので漫才なんて知らないのだ。ソラちゃんもましろさんも世界一可愛いよ!
5位 SPECIALZ / KING KNU
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アニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」のOP主題歌。「ゆあーまいすぺーしゃーる ううーうううー」という最初の5秒 で、もう優勝している。最初の5秒で勝ち。脳内でYUMEKIさんが「もう決めました」と言っている。
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アニメの出来も素晴らしかった。渋谷事変の不穏さ、東京の繁華街でいよいよ百鬼夜行が始まる絶望感がよく現れている。歌詞も原作の内容に沿っており、曲のクオリティも高い。最も幸福なかたちのアニメ・タイアップだと思う。
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6位 第ゼロ感 / 10-FEET
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こちらも幸福なアニメタイアップ曲。映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌。監督兼原作である井上雄彦先生が好きなバンドとしてご指名された10-FEETのTAKUMAさんは、気合い入れて7~8曲作ったうえにストックの5曲をすべて井上先生に渡したら、全部ボツをくらったらしい。「じゃあ、新しい曲作ります。できるまで、ひまつぶしに聴いといてください」と言って、渡したボツ作の中にこの曲があった。そこでようやく「これだ!」と言ってもらえた、と言う。
ソース:https://mezamashi.media/articles/-/25955
作者が気合を入れて作った自信作よりも、息抜きで作った作品や気の抜けたお遊びがヒットする、という話はよく聞く。力が入りっぱなしのものよりも、緩急があって軽いパンチが一発だけ入ってるくらいの方が、消費にちょうどいいのだろうか?くどい味付けよりも、さっぱりした口当たりでカロリーが低いものの方が食べやすいということなんだろうか?よくわからない。実は漫画や文章でもよくある話なんだけど、作者がこれをコントロールするのはむずかしい。編集さんやアドバイザーが必要な所以である。
なお、私はオープニング主題歌『LOVE ROCKETS』を歌うバンド「The Birthday」のチバユウスケが好きだった。こちらも井上雄彦先生の御指名だという。しかし、チバさんは2023年12月に食道がんで亡くなってしまった。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのギター・アベフトシさんに続き、ボーカルのチバさんまで夭折してしまうとは。つらい。とてもつらい。
その1ヶ月後、10-FEETはこの曲の大ヒットを受けて紅白歌合戦に初出場する。TAKUMAさんは間奏で「スラムダンク、The Birthday、チバユウスケ!」と叫び、『LOVE ROCKETS』のサビのワンフレーズを歌った。ラブロケッツ、ラブロケッツ、ジェリーの魂を宿って、と。そして最後はピックを捨てて右手で空の盃を持ち、それを一口飲んで、盃を天に向かって掲げる。天国のチバさんと乾杯するかのように。
これらはリハーサルではまったくやっておらず、ぶっつけ本番でつい色々と叫んでしまったらしい。さすがライブハウスバンドである。なんか演奏もすげぇうまかったし。
実は私も訃報を聞いてからは、『第ゼロ感』を聴きながらもふとチバさんのことばかり考えてしまっていたのだ。自身のキャリア最大の晴れ舞台であろう紅白で、チバさんへの追悼を全力で叫びたくなってしまったTAKUMAさんの気持ち、わかる。その心意気に私の心は救われた。泣いちゃいました。
The Birthday – LOVE ROCKETS
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こんなことをロックン・ローラーに言ってはいけないのかもしれないけれど、ウエノコウジさんとキュウちゃんには長生きして音楽を続けてほしい。
以上です。
この先はハロプロ楽曲大賞と同じになりますのでそちらをご覧ください。(2024/6/1 文筆、2025/4/19 完成)
桃奈の新しい職場の展示会へ行く ME:Iはじめまし展(重ね型の駄洒落)
2024年5月。 日プ女子を駆け足で見終わった私は、桃奈の新しい職場の展示会に行った。「ME:Iはじめまし展」である。2024年4月16日(火)〜5月26日(日)、渋谷タワレコ6階で開催。会場は10代から20代の若いファンばかりだ。若い男女カップルもたくさんいました。たはー。もちろん私は一人。ヲタ友などおらぬ。
歯科衛生士をオマージュした衣装。違います。靴が特注でかわいい。
MOMONAのポストカード自引きしたぜ!やったあ!
渋谷タワレコと言えばハロープロジェクトのお膝元である。「ここならば桃奈の過去にふれても怒られないだろう……」と勝手に判断して素直な気持ちを書いてきた。隣に偶然うつったメッセージも昔の呼び名で彼女を呼んでいたので、きっとお仲間だろう。
渋谷タワレコがいつも力を入れて下さっているハロプロのコーナーも見に行った。嶺脇社長いつもありがとうございます。いろんなハロメンのサインやチェキやメッセージが飾ってあり、そのほとんどが「いつもお世話になっております」で始まっているのが印象的。そりゃそうよねー。わかるよー。
佳林ちゃんの衣装も飾ってあった。魔法少女アニメみたいでかわいい。
アンジュルム時代の桃奈が写ってるチェキと直筆コメントもありますので、お時間がありましたらYOU:MEの皆さんも是非お立ち寄り下さい。4階アニメアイドルフロアです。ちなみにME:Iのコーナーは5階K-POPフロアです。
4階アニメアイドルフロアで大好きなハロメンの直筆メッセージを光の反射が入らないよう必死で写真に収めていたら、周りが急にざわざわしはじめた。なんと、LiSAさんがゲリラ的に来店していたのだ。びっくりした。LiSAさんは自分の等身大POPと一緒に並んで写真を撮ったり、自分のCDコーナーの前でぬいぐるみとともにキャッキャと写真を撮っていらっしゃって、とても愛らしかった……。我々のような通りすがりの客にも笑顔で手を振ってくださる姿はまるで天使のようだった……。細くてかわいらしいショッキングピンク髪の天使。
他にもCrimsonCratClanという男性グループが自身の巨大ポスター前で撮影しており、チラシを配りながら「LiSAさんだ!」とはしゃいでいらっしゃった。こちらもかわいい。
いたる所にミュージシャンのサインがあり、ここでしかもらえない特典がたくさんあって、グッズも買える。巨大展示やポスターや直筆コメントなど、写真を撮りたい場所もいっぱいある。限定イベントも開催される。そして、ゲリラ的に本人登場 がある。そうまるでミッキーマウスのように 。ここはテーマパークなんだな。
渋谷タワレコは日本一の音楽テーマパークになった。 私たちは渋谷のタワレコに「音楽」を買いに来てるんじゃない、「体験」を買いに来ている。 ここでしかできない「体験」を求めてここに来るのだ。もっとはっきり言うと、ここでしか撮れない写真を撮りに来ている。そしてそれをSNSにアップして己を表現する。ロック生まれアイドル育ちの嶺脇社長が狙っていた「アーティストとユーザー、ユーザーとユーザーをつなぐハブになるリアルの場」とは、このことだったのか。嶺脇社長は10年かけて渋谷に黄色い音楽のテーマパークを作り上げた。すごい。戦略的に正しい。
「CDが売れなくなった」と言われて久しい。私の地元駅前のレコード屋やCDレンタル店はすべてつぶれた。そんなご時世でも、渋谷タワレコにはたくさんの人がいる。学校帰りの学生も音楽を求めてここに来ている。外国人観光客もたくさんいて、結束バンドのコーナーやアナログレコードに群がってる。こんなに活気があるレコード屋さんを見るのは本当に久しぶりだ。それも嬉しい。
一階で推し活グッズ売ってる。売れ筋なんだと思う
いまやCDはオタクにとって音楽を再生するものではなく「ファングッズ」の一つ になった。おそらく、紙の本も同じ運命をたどるのだろう。紙の本が生き残る道は「ファングッズ」としての価値を高めることであり、実店舗の本屋が生き残る道は「イベント」や「体験」をたくさん増やしていくことに違いない。しかし、人見知りで孤独なオタクの私、いや「森皆ねじ子」にそれができるのだろうか……?
とっくに引退した推しメンたちが笑顔で写っているチェキが色あせていくさまをながめながら、私はそんなことを考えていた。
さて、ここからは余談です。
ファントミラージュが大好きだったねじ子は「よし、Girls²のコーナーも見ていこう!地元じゃ絶対ガルガルのCD見つからないし!」と思った。石井蘭ちゃんがかっさーと同じオーディションにいてくれたの、めちゃくちゃ嬉しかったし。「私アンジュルム大好きなんですよ」って言ってくれたのも、めちゃくちゃ嬉しかったし。再デビューおめでとう!
しかし。ガルガルのCD、全然見つからない。どこだ。4階女性アイドルコーナーにもない。3階J-POPアーティストのコーナーにもない。LDHの棚にもない(E-Girlsやi-screamはすみっこの方にあったのに)。もしかして、と思って念のため5階K-POPフロアのME:Iコーナー近くも念入りに見たけれど、ない(なおProduce 101 the GirlsのCDと本はあった)。20分ほど歩き回ったねじ子は疲れ果て、あきらめてインフォメーションへ向かった。「ガールズガールズっていう女性アイドルのCDを探してるんですけど、どこですか?」と質問された女性店員さんはすぐに案内してくれた、3階すみっこのキッズコーナーへと……。
そりゃないよ!見つかるはずないじゃん!
ガルガルのCDとDVDは『いないいいないばあ』の横、『おかあさんといっしょ』と『あんぱんまん』のCDの上の棚に置いてあった(2024年5月現在)。もう一度言うわ。そりゃあないよ!!
いや、わかってるんだ。Girls²は『ガールズ戦士シリーズ』に出演していた女の子達を集めて作った、企画ものの子供向けユニットであった。「ガールズ戦士シリーズ?なにそれ?」って思うでしょ?一応説明します。『ガールズ戦士シリーズ』っていうのは、日曜朝にテレビ東京系列で放送されていた実写特撮TVドラマです。三池崇史さん監督。LDH系列ダンススクールの(おそらく優等生だった)中学生女子を毎年5人くらい集めて、ドラマの中で魔法少女に変身して戦います。東映が近年まったく!やってくれなくなった!実写女子特撮です。東映不思議コメディーシリーズが大々大好きだった私は、なんだかんだ狂喜乱舞しながら見ていたのです。
変身シーンでソロダンスします。これが長い。とてつもなく長い。一人当たり1分くらいある。しかも一切カットせずに毎週、全員分流すので変身シーンだけで5分くらいかかる。変身始まってからトイレ行ってお湯を沸かして紅茶を入れて帰ってきても終わってない。完全にバンク映像であり一秒たりとも変化がないので、大人の私にはひどく退屈な時間なのですが、テレビの前の女児たちはこの時間が大々々好きでした。テレビの間で歌い踊り、おもちゃを持って戦士になりきって一緒に変身するのです。3歳から7歳くらいの子どもたちが物事を理解するために行う「ごっこ遊び」「見立て遊び」のまさに正しい姿といえます。
もちろんオープニング映像やエンディング映像でもガールズ戦士たちが歌って踊りますし、必殺技は「フィナーレダンス」なんでそりゃもう抜群に踊ります。テレビの前の女児もそのたびに踊ります。私が当時一番好きだった曲はmirage²の『じゃん☆けん☆ぽん』。エンディングで毎週流れ、最後は画面に向かってじゃんけんです。キッズアニメの定番。でも思惑通りにじゃんけんしちゃう!大好きになっちゃう!
リアル中学生が演じているため、撮影スケジュールにたっぷり余裕があります。おそらく長期休みの間にまとめ撮りし、放送開始時にはすでに撮影が終わってるのでしょう。番組の放送中は彼女たちが出演するリアルイベントが毎週開催されます。キャスト本人による歌と踊りのイベントが日本各地のショッピングモールで行われ、大盛況でおもちゃが飛ぶように売れたと聞きます。完璧な商売。
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(蘭ちゃんことファントミダイヤ登場は12:00から)
コロナの流行によってリアルイベントが打てなくなった『ガールズ戦士シリーズ』は、売上が芳しくなくなったのか先細りし、シリーズも終了してしまいます。2017年から2022年まで5年くらい、計5シリーズ(リズスタはガールズ戦士じゃないので除く)。貴重な実写女子特撮の枠がまた一つなくなりました。
その後、『ガールズ戦士シリーズ』の出演者を集めたGirls²とLucky²のメンバーがおはガールの枠を4年間独占 します。私はハロヲタなので、これは非常に!苦々しい気持ちで!見ておりました。だってこれじゃハロメンがおはガールになれないじゃんかよお!! むきー!蘭ちゃんはおはスタでけん玉を披露し(蘭ちゃんの1分PRで机の上にあったのは「おはガールふわわ」タイアップのバンダイ商品・ケンダマクロスでしたね)、おはガールとして木村昴兄さんと一緒にCDを出しました。このCDも渋谷タワレコに置いてありましたね。以上、昔話でした。
……こんな経緯だから、Girls²のCDがキッズコーナーに置かれているのは妥当なのである。間違いじゃない。わかる。それでも、それでも!「せめてLDHの巨大コーナーにも置いてあげられないの?」 と思わずにはいられない。部外者の私にはなぜそこに入れてもらえてなかったのかわからない。子ども向けの企画だからって、一過性のものとして扱われてない?スクール上がりだから一線引かれている感じ?成長した大人のアーティストとして本当に扱ってもらえていた?
そもそも、LDHは渋谷タワレコ3階の壁一面を占めるほど巨大なスペース を用意してもらっている。それなのに、女子グループはそのほんの片隅でしか扱われていない。それも悲しい。E-GirlsもFlowerも紅白に複数回出場した良いグループだったのに、もう存在していない。それも悲しい。
私はLDH界隈のことはよくわからない。けれど、当時の蘭ちゃんのGirls²内での扱いや先輩女子グループの行き詰まりを思い出してみても、蘭ちゃんがそこから飛び出して広い世界で挑戦してみたくなる気持ちはわかる。当時ファントミダイヤの変身ダンスに一目惚れした人間として、私は彼女の勇気と挑戦を大いに支持している。かっさーがハロプロを飛び出したとき「かっさーが卒業して世界に挑戦してみたくなるのも当然だよ……。上が詰まりすぎだもん……」と多くのハロヲタが思ったように。
ハロヲタとハロメンの多くが桃奈を支持してあふれるほどの応援と投票を桃奈に送ったように、蘭ちゃんと長い付き合いを持つメンバーやスタッフや古参ガルガルファンの皆さんが今の蘭ちゃんを応援してくれることを心から願っている。
そうだ!2019年にネットでファントミダイヤを叩いていた奴ら!私は忘れてないからな!お前ら全員に!今からでも言いたい!「てめえらの目は節穴だったな!お前らみんな、見る目なかった!ガハハハハハハハハハハハハハ!私の勝ちだ!」と。何に向かって勝利宣言しているのか自分でもよくわからないが、中学生の女子たちに無責任な中傷をしていた人間に私はどうしてもバーチャル・お礼参りがしたいのだ。セイラちゃんは当初一匹狼の孤高の怪盗で、なかなか既存キャラと仲間にならない無愛想なキャラ……という「設定」だったから、役と役者を混同しているような書き込みさえ散見されていたように思う。嫌になっちゃうよね。蘭ちゃん、桃奈と同じオーディション受けてくれてありがとね。(2024/05/30文筆)
2023年 ねじ子の楽曲ランキング(前編) ねじ子の俺コンランキング2023です。
2年遅れですが書きます。
1位 想像以上 / PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS
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2023年秋、ハロヲタに激震が走った。元アンジュルムのかっさーことももにゃこと笠原桃奈ちゃんが視聴者参加型オーディション番組に参戦したのだ。卒業時の宣言通り、K-POP系列のオーディションであった。
本当のことを言うと、当時私は番組を見ていなかった。なぜか。それは簡単である。視聴方法がわからなかった 。Leminoってなに?当然のように投票方法もわからなかった。dアカウントを持ってない、いや、自分がdアカウントを持っているのかどうかすらわからなかった のだ。
多くのハロヲタのレベルって実はこんなもんである。我々の腰の重さを舐めないで欲しい。 調べる、インストールする、その面倒くささを乗り越えるだけのモチベーションが沸かなかったのだ。
さらにもう一つ、ハロヲタらしい理由がある。「かっさーが帰ってきた!」とハロヲタが大騒ぎしているなか見たシグナルソング『LEAP HIGH!~明日へ、めいいっぱい~』のMVが、ユニゾンの口パク映像 であった。これは萎えた。ハンドマイクを持っていない。口とマイクの距離を一定にするそぶりもない。誰が欠けても問題がなく、誰がどの声なのかを考える必要もない。秋元グループを思わせる架空の制服衣装を身にまとっていることも、多人数で群舞しつつステージの段差によって序列が明白なのであろう演出も、まったく好きになれなかった。エンタメとしての面白さを感じることができなかったのだ。私個人で言えば「どうせかっさーは実力で受かる。かっさーが落ちるはずがない。あやちょとハロプロが育てた自慢の娘だからな!」と、たかをくくっていた面もある。
放送中に「ハロヲタの組織票が多すぎて迷惑だ!」という声がSNSで流れているのをよく目にした。それは完全に的外れ であることを私は知っていた。だってハロヲタって少ないから。そんな人数いないことは長年身にしみてわかってるから。しかも、自分の周囲のハロヲタは番組を見てさえいなかった。いやあ、年老いると新しい文化の扉を開くのがおっくうになっるのよ。我々の年寄りぶりを舐めないでほしい(2回目)。 私の体感では、番組を見ていたのは全ハロヲタのうち約半分。残りの半分は口パクのステージにまったく価値を感じない人種で、K-POP全般を(おそらく今のME:Iも)うっすら苦手で避けてるタイプ。そして番組を見ていた半分のハロヲタのうち、かっさーに投票し続けたのはおそらく半分くらい。つまり桃奈に熱心に投票していたハロヲタは全体の4分の1程度だと推測する。
そもそも「モーニング娘。」の「現役」メンバーにしか興味がないハロヲタは多い。想像以上に多い。ハロヲタの中で一番多い派閥だと思う。アンジュルムに興味がなく、さらにその卒メンである桃奈のことをほとんど知らない(正確には研修生実力診断テストの衣装しか知らない)ハロヲタも多いはずだ。
投票第2週において、桃奈は4位の票しか集められなかったという。妥当だ。以前から桃奈を知っているハロヲタが「決め打ち」した投票数として、そのくらいが現実的な数字だと思う。ハロヲタの数ってそんなもんだろ。我々に111万の投票力があるはずもない。ハロヲタがそんなにいるはずない。そんなこと我々が一番よくわかってる。そんなもんがあったらとっくにSSAも地方アリーナも東京ドームも埋められてるんだよ!!!!!
いろいろあって桃奈は圧倒的な差をつけて一位でデビューを勝ち取りグループのリーダーになったようだ。おめでとう。見事だよ。桃奈一人だけ、ここに来るまでにばらまいた伏線の量も長さも違うもんね。一人だけ違う「戦(いくさ)」をしてる。おそらく番組の中でも彼女は完璧な物語を描いたのだろう。周囲の人間は「ずるい」と思ったかもしれないが、そんなことはもういいのだ。「勝ったもん勝ちや!」って四天宝寺中学の皆さんも言ってるし。
……さて、ここまでが2023年末当時の私の記憶である。
私が日プ女子に、いやME:Iに始めて興味を持ったのはその4ヶ月後。ME:Iがデビュー曲『Click』をTVの歌番組でつぎつぎ披露し、その中で「生歌論争」が行われていることに気付いたときであった。大変申し訳ないことに、私はずっとME:Iは完全口パクであり、パフォーマンス時にいつも同じ音源を流していると思い込んでいた。でも違った。音源の上に生歌が乗っている、いわゆる「かぶせ」のようだ。ハロプロのコンサートでも曲によっては「かぶせ」をしている。
生歌もちゃんとやる意思があるのか。それに気付いた私は初めてME:Iに興味が沸いた。デビュー曲『Click』もわりと好みであった。ようやくグループ創世のオーディション番組である日プ女子を見る気持ちになった私は、2024年4月に「日プ女子 視聴方法 無料」と初めて検索した。Leminoなんてアプリは聞いたこともなかったし、視聴できる環境にたどり着くまで苦労した。新しい巨大なコンテンツにふれるための「私自身の」コンディションがようやく整った、とも言える。
日プを一話見てわかった。
なんだ、これASAYANじゃないか。
「カメラの入った公開合宿オーディション」がまずASAYANであり、モーニング娘。創世の歴史である。その中で行われる個性的なプロトレーナー陣による熱血指導。それによって泣く姿、努力するさま、協力する様子をカメラが逐一とらえて流す。一人一人のスキルが上昇していく、それが一番のエンタメになる。見ている方も感情移入しやすい。これはまさにASAYANが25年前にやっていたことである。モーニング娘。もそうやって作られたし、太陽とシスコムーンもそうだった(サンフランシスコで合宿審査したから太陽(サン)とシスコムーン)。デビュー前の一般人を残酷なほどはっきりと画面にさらし、見世物にし、メンバーをしっかり比較したうえで容赦なく切り捨てていく。ああ、これもASAYANだ。モーニング娘。も8期まではこれを放送していたのだ。このエンタメを地上波で供給できていた。
私が最初に食わず嫌いしていた「AKBっぽさ」は、制服衣装と視聴者投票システムだけだった。その視聴者投票システムだって、ASAYANのモーニング娘。6期オーディションの国民投票の方が先にやっていたことだし。どうしてやらなくなってしまったの?モーニング娘。だって昔はこれができていた。国民投票をまるで無視したメンバーを選んで視聴者の顰蹙をかったのがダメだった?しかもそのとき投票一位だった女性がアダルト業界へ行ってしまったから?それとも8期オーディションで落とした柏木さんと指原さんがAKBに入ってハロヲタをごっそりさらっていってしまったから?だからオーディションを公開するのやめたの?それともAbemaでハロプロ20周年オーディションを大々的に放送してもらったのに「合格者はゼロ!全員研修生に誘います!」というひどい不義理をやってハロヲタすらもドン引きさせたから?あれよく怒られなかったよね?いや怒られたのかな?私がAbemaならキレるけどな。
まとめると、①ASAYAN の合宿オーディションと個性的なプロトレーナーによる熱血指導の公開システムに、②AKBの視聴者投票 で決まった順位を公開放送するシステムを盛り込み、さらに③韓国の練習生組織 の中で行われている「定期的にグループを組ませ発表会して個人評価する」ステージを盛り込んで、お金をかけてショーアップしたのがPRODUCE101シリーズ(略して「プデュ」)なんだろう。なるほど、これは上手くできてる。 ハロヲタは夢中になるに決まっている。だってASAYANだから。私もASAYANロックヴォーカリストオーディションでモーニング娘。を(正確には福田明日香さんを)大好きになったクチだ。だからこういうの大好きよ。まんまとはまった私は、どんどん日プ女子を再生し始めた。
私がずっと前から好きだった女の子がもう一人いる。石井蘭ちゃんだ。ファントミダイヤだ!セイラちゃんだ! 当時ここ★ に書いたけど、私はファントミダイヤに鞘師の面影を見ていた。 ファントミラージュが放送されていたのは、ちょうど鞘師がステージにいない時期だったのだ。赤い衣装でひときわキレのいいダンスを踊って変身するファントミダイヤに私は鞘師の幻影を見ていた。失礼な話である。本当にすみません。極上のダンサー二人を比較したり、どちらかにどちらかの幻を見るのは両方にとって失礼だ。わかってる、ごめんなさい。本当に申し訳ない。ダンスを語る語彙を持っていない私にとって「鞘師に見える」というのは最大級の褒め言葉だったです。亡霊の戯言だと思って許してほしい。まぁとにかく私は紅羽セイラことファントミダイヤが大好きだった。あと『私がモテてどうすんだ』は2020年楽曲ランキング8位 にしてたね。
セイラちゃん、じゃなかった蘭ちゃんがいるじゃないか! しかも一話からアンジュルムを大好きだと言ってくれてるぞ!マジで!?ありがと蘭ちゃん!確かアンジュとガルガルって対バンしてたよね?(これ★ )蘭ちゃん最高!ガルガル辞めちゃったの知らなかったよ、結構最近までいたよね?と思いながら見たのがこれらである。
TOKYO GIRL
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蘭ちゃんのキリングパートと、蘭ちゃんを左右でシンメトリーに支える桃奈と恵子ちゃんが素晴らしい。
蘭ちゃんのダンスの実力はファントミダイヤの頃から折り紙付きであった。しかし、Girls2の中で蘭ちゃんはあまり推されていなかったよう思う。その境遇はどこか桃奈に似ていた。ハロプロとLDHという日本では「かなり大手」 の事務所に所属しながらも、その中で順番がまわって来ない。そもそも所属グループ自体があまり推されていない 。実力はあるのに、グループの露出量が極端に少ない。グループの中での役割も少なく、別の子がセンターとして推されている 。このまま順番をじっと待っていても、私がメディアに映る機会は来なそうだ。女性アイドルの寿命は短い。時間がない。チャンスを求めて外へ出よう!!!……そう思う気持ちはよくわかる。桃奈と蘭ちゃんは境遇が似ていた、と私は勝手に思っている。二人が同じオーディションに参加してよかった。蘭ちゃん、挑戦してくれてありがとう。蘭ちゃんに投票してくれた国民プロデューサーの皆さんもありがとう。
桃奈の話に戻ろう。桃奈と心ちゃんの最初のアクト、rebloomの『アイドル』において桃奈が(自分のA評価ではなく)心のA評価で泣き崩れたとき、そして第一回順位発表会で桃奈が唐突に「私は心ちゃんを愛しています」と宣言したとき、私は桃奈が一位になった理由をはっきりと理解した。
オーディション番組は上手くアングルを組むことができた人間が勝つ。物語を作った奴が勝つ 。そう決まっている。桃奈はこの時点ですでに優勝を決めていたのだ。
桃奈は自分の物語を作るのが上手い。流行の言葉でいえば「ナラティブ」ってやつだ。これが桃奈は昔から上手かった。アンジュルムを卒業して消息を完全に絶ち、一般人になってから韓国に単身レッスン留学に行って2年後にこのオーディションに参加するまで、桃奈は着々と物語を仕込んできた。そして彼女はここで自分が積み上げてきた長い物語をいったん捨てて、「心ちゃんが主役の物語を」「心ちゃんといっしょに」作ることに決めたのだ。
なんで彼女がそんな決断をしたのかわからない。
だって私は、出番前の桃奈が心ちゃんに「あなたのためのステージだよ」と言ったとき、「はぁ?何言ってんのよ!?桃奈のためのステージでしょーが!?私は!!あなたのためだけに!Leminoくんだりまで来てこの番組を見ているんだよ!?」と画面の前で叫んだのだ。でも、桃奈はそうじゃなかった。心ちゃんと組むことになって一緒に練習した短い間に、彼女は自分の物語を完全に捨てて心ちゃんの物語を作りあげることに決めていたのである。
そしてそれは完全に上手くいった。rebloomは完璧な再生の物語を見せた。心ちゃんも桃奈も泣きながらぎゅっと抱き合っているのをカメラが映しだす。
ああ、これは一位を取るわ。相変わらずだな、桃奈!この人たらしが! この感触はかみかさ(アンジュルムの上國料萌衣ちゃんと笠原桃奈ちゃんのペア)に似ている。かみかさもすごく魅力的だった。かみこはグループ一番下の末っ子かわいがられポジションを、早々に桃奈に取られた。かみこはそれに当初反発していた。しかしいつのまにか二人はいてても仲良しになって、最終的にはかみこから桃奈への愛の方がずっと重くなっていた。あのときと同じだ。やってんな桃奈!
……ちょっと昔話をしよう。アンジュルムで桃奈と一番仲のよかったかみこは、桃奈の卒業を「卒業を決めて次の夢について話している桃奈はすごくかっこいいなと思います」「桃奈から聞いてるその夢を桃奈と一緒に叶えたかったなって思ってた」と泣きながらも受け入れ、新しい挑戦を祝福した。それがあったから、ハロヲタは桃奈を心置きなく応援することができた。 日プ女子を見たハロヲタ全員が「かみこの言ってた桃奈の次の夢とは、このことか」 と一瞬で理解した。かみこが桃奈の卒業を受け入れてなかったら、私たちはここまで一丸となって桃奈を応援することはできなかったと思う。だってかみこが大切だから。彼女が傷ついたらいやだから。
ハロプロは桃奈に見限られた。 どんなにごまかそうとしても、それはそうなんだよ。「ハロプロの中で私はこれ以上の上がり目がない」と桃奈に判断された。そして悲しいことにその判断は正しい。 だから私たちは桃奈をまったく恨んでいない。ハロプロという組織は、桃奈の音楽性や発信力の高さやK-POP好きな一面をまるで尊重してこなかったのだから。
私はコロナ禍が始まったばかり、緊急事態宣言下の桃奈のこのブログを思い出す。
一気に遡る猿時代 笠原桃奈
しかし翌日、桃奈は「だめになった」とブログで報告した。音なしですら、IZ*ONE『Fiesta』のダンスを披露する許可が出なかった。なぜかはわからない。
いつもこういう顔 笠原桃奈
その2ヶ月後、同じ曲をモーニング娘。の加賀楓ちゃんがカバーし、音声なしで公開した。 なぜかこちらは世に出た。
投稿しました。 加賀楓
別に加賀ちゃんがえこひいきされていたとは思わない。これだけダンスカバー動画が日常にありふれている中で、「音声なしならOK」という判断が通るのも間が抜けていると思う。この出来事からわかることは、当時のかっさーのまわりに「緊急事態宣言下でも供給できるサービスを少しだけでもファンに提供したい」という、かっさーの真摯な思いをくんであげる大人が一人もいなかったということだけである。モーニング娘。には加賀ちゃんのために交渉してくれる大人が(一応)いた、ということでもある。くだらねー、まじでくだらねー。萎えるわ。なんでだめだったの?なんで急にOKになったの?どっちも意味が分からん。若いかっさーが自らの環境にがっかりしたことは、想像に難くない。
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ちなみに桃奈は2024年5月、KCON2024Japanの満員の客席の前でFiestaのダンスカバーを披露した。私は画面の前で泣いた。ああ桃奈、よかったね。ハロプロでこれをやらせてあげられなくて本当にごめんね。私が代わりに謝るよ。
これが桃奈の紡いできた物語(のごく一部)である。桃奈がハロプロを見限るのは当たり前だし、桃奈がハロプロを見限ったところまで含めて 私は彼女のことを愛している。彼女の先見の明と、勇気と度胸とチャレンジ精神を愛しているのだ。それでこそ自主性と多様性を重んじるアンジュルムが生んだ娘だと、誇らしくさえ思っている。
桃奈はハロプロを、アンジュルムを捨てたのにハロヲタに支持された。これは素晴らしいことである。これができる人間が他にどれだけいるだろう。「ハロプロの卒メンが次の投票制オーディションに出たら、またハロヲタ票で無双されてしまう」という意見もあるようだが、それは違う。ここまで長い時間をかけて丁寧に下地を作る人は他にいない。桃奈は若くしてそのような環境を育てることができる言葉使いとネゴシエーションの天才なのである。プロレスで言うならば「ブック」作りが天才的にうまい 。この特殊能力が披露されてしまったのだから桃奈は一位を取る。
……あとになって背景を知れば知るほど、rebloomで桃奈が自分を主役にせず、心ちゃんの物語を支える役割に回ったことは100%の「正解」 なのだ。J-POPアイドルの申し子である桃奈と、K-POPアイドルの申し子である心。ハロプロで5年活動し武道館で祝福されながら円満卒業した桃奈と、1年足らずで理由のわからない脱退を余儀なくされて深く傷ついている心。あえて強気を表に出す桃奈と、あえて不安を口に出す心。シュッとした表情が得意でいつも大人じみていると言われる桃奈と、笑顔が似合う甘い顔の心。何もかもが正反対の二人。投票の舞台はK-POPアイドルの土壌であるPRODUCE 101で、観客もスタッフもK-POPの影響を強く受けている。おそらく桃奈のおかれた立場はアウェイだ。傷ついた心ちゃんの復興の物語を支えるのが正しい。自分の物語を捨てて心ちゃんを支える決意に桃奈が短期間でたどり着いたことが、桃奈の一番の勝因だった。時がたてばたつほどそう思えてくる。それは戦略的に行ったことではなく、あくまで桃奈が自然な気持ちの動きのままに行動したらそうなったのだろう。結果的にそれがベストの戦略だっただけで。それを含めて「桃奈の読みがいい」と言うべきだ。二人の友情は美しい。
日プ女子の番組は後半になるにつれてよくわからないものになっていった。軸を作れずに迷走していたのかもしれない。あまりに多くなった投票数に困惑し、振り回されていたのかもしれない。桃奈と心ちゃんのライバルアングルは「愛しています」によって潰され、蘭ちゃんと美羽ちゃんのライバルアングルは本人たちがまったく乗り気じゃないことが明白だったから、なんとか他に注目メンバーを作りたかったのかもしれない。よくわからない。私はステージと楽曲が素晴らしいものであることにしか興味がないし、後追い視聴なので番組外の炎上情報は一切入ってこない。「どの子も可愛いなぁ、目移りしちゃう。この子(ぱるたん)とこの子(内山凜ちゃん)はハロプロに入ってほしいなぁ」などと、のんきに思うばかりであった。
桃奈のラップはトレーナー陣の評価が渋かった。しかし「賞賛も批判も愛してるわ」という歌詞の持つ力が、そのすべてに勝っていた。あの状況の彼女から生まれた「賞賛も批判も愛してるわ」というパンチラインが持つ力を下げることは誰にもできなかったのだろう。桃奈が一位になった理由を、ここでまたひとつ理解した。
K-POPに強いこだわりを持つ完璧で冷たい氷の女王かのような印象だったシグナルセンターの櫻井美羽ちゃんが、いつのまにか桃奈と仲良しになっていたのにも驚いた。運動会で一緒に風船を割る姿を見たとき、その派生で白雪姫衣装で林檎を派手に飛ばす桃奈に爆笑する美羽ちゃんを見たとき、私は体が震えるのを感じた。いつの間に仲良しになってんだよお前ら!やってんな!(二回目)この人たらしが!(二回目) 桃奈が圧倒的な票数で一位になった理由を、ここでまたひとつ理解した。美羽ちゃんってばこんなに面白い人だったのか。私の大好きな、こつこつ時間かけて上達するマイペースな職人タイプ(コミュニケーションは少し不得手)じゃん!以前から知ってる桃奈と蘭ちゃんがいなかったら、私は美羽ちゃんに投票してたな。
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そしてここらへんで、Lemino再生中に頻繁に挟まれるDocomoのCMが完全なネタバレになることに、私は気が付いた。これは非常に困った。当初は桃奈しか見分けが付かなかった(そして桃奈が合格することは知っていた)ために何の問題もなかったのに、こちらの解像度がだんだん上がってきてしまった。やばい、誰がどの子かわかるようになってきてしまったぞ!これは大いなるネタバレだ!いかん!見ちゃダメだ!しかもLeminoさんってばCM飛ばせないのよ。それどころか、ちょっと早送りしたりちょっと巻き戻したりするだけでも頻繁にCMを挟み込んでくる!不便だ!あんまり使い勝手よろしくない!どうしよう!……そこからは、CMの間は耳をふさぎ、薄目で画面をなるべく見ないように遠くを見ながらの視聴になった。こんな私でも、最後に誰が選ばれるかは知りたくない。
そして最終回。最終順位発表だ。TikTokで女子中高生に圧倒的人気のりんりん姫が二位になり、桃奈が一位になる。すげえなTikTok。今の世界で楽曲が流行するのにTikTokは不可欠なんだな。ハロヲタはTikTokに全然生息してないから守備範囲外だったよ。勉強になった。そして最後に11位で心ちゃんが選ばれ、1位の桃奈が侍泣きをするアップで番組は終わる。
……なんだこれ。おかしいだろ。あまりにもできすぎている。 完璧じゃないか。 桃奈だけじゃなく、rebloomとしても完成された物語 だ。これはエンタメだ。現実なのに最高のエンタメだ。誰が脚本を書いたんだ?桃奈か。ここで私は、桃奈が投票中だけでなくデビュー後も高い人気を保っている理由を知った。
桃奈は昔から伏線を張るのがうまかった。長い時間をかけて自分の物語を作るのが抜群にうまい。あとスピーチもうまい。11歳のハロプロ研修生発表会のときから そうだった。
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もう10年近く前、彼女は小学5年生でハロプロ研修生になった。すぐに行われた研修生発表会ではモーニング娘。の『春ビューティフルエブリデイ』を歌った。まず選曲がいい。すでに引退から数年たっていた亀井絵里ちゃんメインの隠れた名曲だ。音程はえらいことになっていたけど、そんなの些細なことだ。だってこのときすでに桃奈は翌年への伏線を張っていたのだから。
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一年後、桃奈は再び研修生発表会に表れた。選曲はこれまた亀井絵里メインの隠れた名曲『愛しく苦しいこの夜に』。渋い。渋すぎる。「小学生にしてえりりんのオタクとは!すげえ!大人びてる!」と多くのハロヲタがうなった。一年前の伏線回収 であり、えりりん亡霊の心を一気に奪った。衣装もすごかった。おへそが見える白いノースリーブニットにホットパンツでロングの黒髪をサイドに寄せ、12歳とは思えないほど体幹が成長している姿は見るものの度肝を抜いた。ハロヲタを席巻しただけでなく、ハロプロ外でも話題になった。アニメやゲームの話題をする掲示板でこのときの桃奈の写真が貼られているのを私は何度も見たことがある。ロリコン紳士達の大騒ぎにもしょっちゅう巻き込まれていた。そこでは決まって「この逸材を生かせないハロプロはだめだな」と言われていた。ぐうの音も出ません。
二年続けてえりりんメイン曲という「通」な選曲、小学生の突然の成長、それを上品に見せる衣装とヘアメイクで桃奈は堂々ベストパフォーマンス賞を取る。これは中野サンプラザに集まったオタクによる現場投票だけで決まる。プデュでいう「現場票」だ。思えばこの頃から桃奈は長い時間をかけて伏線を張り、自分の物語を作るのが上手かった。現場でファンをつかみ取るパワーもあった。突然振られたときのスピーチも当時から抜群にうまい(この画像の31:46)。小6とは思えん受賞コメントである。桃奈はおおいに注目され、画像がネットを駈けめぐり、半年後にアンジュルムに昇格した。
桃奈は日プ女子というコンテンツの中でも初回(レベル分け発表回)に完璧な伏線を張り、最終回でそれを最も美しい形で回収した。ブック作りの名人 と言わざるを得ない。分量を減らされても、自慢のスピーチ力で順位発表会の短い尺の中で印象を残した。三週間足らずで日プ女子動画のすべてを見終わった私は、桃奈がハロヲタ以外からもたくさんの票を集めて一位になったことに納得した。なるほど、こりゃ一位になるわ。
最後にもう一度言う。
ハロヲタが111万もの組織票を集められるはずがねーだろ!
そんなにいるはずがねーわ! 目を覚ませ!現実を見ろ!!ガラガラの地方公演から目をそらすな!!!!
そんな人数と熱意があったらYoutubeの新曲MV再生回数があんな数字のはずがないんだよ!
さっきも書いただろ、番組を見ていたのはハロヲタの半分。そのうち、かっさーに投票し続けたのはおそらく半分くらいしかいないね。つまり桃奈に熱心に投票していたハロヲタは全体の4分の1程度しかいないんだよ。そう私は確信する。残りの4分の1は、文寧かしーちゃんかぱるたんか内山凜ちゃんに流れたと見るね。それがハロヲタ好みのど真ん中でしょ(断言)。 私たち所詮ドルオタなんだから、自分の欲望に正直に決まってるのよ。111万はなぁ、桃奈が自力で外から勝ちとってきた数字なんだよ!
表題に戻ります。一位に選んだ『想像以上』は、私の再生回数が最も多い曲です。オーディション最後の課題曲であり、デビューできるかどうかわからない極限状態のメンバーが鬼気迫るパフォーマンスをしていて最高です。髙畠さんのセンターが非常にいい。彼女の「イマッジネー」が好き。ハスキーな歌声も大好き。髙畠さん、今からでも遅くないからハロプロに入りませんか?今さらハロなんていやだ?そりゃそうか。すいません。ちゃんみなの方がいいよね。私もそう思うよ。
以下後編へ続く。(2024/6/1 文筆、2025/3/10 完成)
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