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2021年 ハロプロ楽曲ランキング

※今更2021年の楽曲ランキングです。新型感染症流行に免じて許してほしい。

私はこの文章を長いあいだ書くことができませんでした。2021年2月に高木紗友希ちゃんが突然いなくなったことに、私はひどく萎えてしまったのです。彼女をあんなにも早く──週刊誌の報道からたった一日で──Juice=Juiceというグループから脱退させる必要などなかった。お相手のミュージックステーション初登場にあてつけるかのように、生放送直前に脱退を発表する必要などまったくなかった。私は今でもそう感じています。せめて、紗友希とファンがお別れできる場所をどこかに作ってあげてほしかったです。

2021年2月12日、それは私が首を長くして待っていた新型コロナウィルスのワクチンがついに日本に届き、厚生労働省の専門家部会において承認が了承された日でした。私は早くから好きな酒を用意してこの日を待っていたのです。私にとって「今世紀最大の祝祭」といえる日に、大好きな女の子がクビになるとは。「なにこのニュース。最悪の対応だわ。古い悪習を断ち切る最大のチャンスを事務所は自らつぶした」としか思えませんでした。

紗友希の彼氏が出ると聞いて、私は数年ぶりに生放送の音楽番組ミュージックステーションを録画予約したのに。「紗友希の彼氏ならば口パクは絶対に許さんからな!」「紗友希より歌が下手だったら許さんからな!」「いやそれはさすがに無理があるでしょ」などと笑いながら楽しみに待っていたというのに。優里さんは実力あるシンガーソングライターだと聞いていたから、ハロプロに曲を提供してくれればぜんぶ許す!と思っていたのに。

紗友希をグループからとつぜん脱退させたうえにM-LINEに引き留めることができなかった事務所、彼女を罵倒する少なくない数のハロヲタの仲間たち、彼女を引き抜いたっぽく?見える?周囲の大人たち。そのすべてに私は大いに冷めてしまいました。

「アイドルが恋愛することによって離れるファンがいる」と主張する人間がいるならば、私はハロプロ結成当初からずっと「アイドルに恋愛禁止ルールを押し付けていることが露呈することによって離れるファン」なのです。矢口がモーニング娘。を首になったときも、ものすごく、ものすごーく萎えました。私がハロプロから最も離れていたのは、矢口がモーニング娘。を首になったあとの二年間です。その期間だけ私はハロプロを追っていません。まあ正確には冠番組の『ハロステ』だけは毎週見ていたのですが、ろくすっぽ楽曲を聴いていませんでした。

恋愛は生命の根源的な衝動です。生命の根源的欲望を軽く見てはいけません。それを甘く見ると、反動で必ずひどいしっぺ返しが来ます。恋愛は私たち凡人が世界を変えるための唯一の方法であり、自分がこの世に存在していたことを歴史に残すたった一つの手段なのです。「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」と太宰治も言っています。

10年間やり切った仕事──しかも人間として当然の権利を行使しただけなのにファンからの罵倒が待っているであろう仕事──と、いまの恋愛。どちらをとるかは明白です。私が紗友希でも恋人をとるでしょう。

現代日本において、一個人に恋愛を禁止することは人権侵害です。ハロプロがそのような人権侵害を若い女子に強いる組織であるならば、私の心が寄り添うことはできないのです。誰も得しない短絡的な人事に、私はすっかり萎えました。ハロプロのために長文を書く意欲がなくなってしまったのです。これは私なりの抗議のかたちでもあります。

私はずっとずっと、自分が思っているよりもずっと、紗友希のことが好きでした。みんなそうでしょう?ハロメンも、ハロヲタも、ハロプロに関わっているすべての人間が彼女の歌を愛していた。ハロプロに紗友希という歌姫がいることを自慢し、誇りに思い、鼻高々だった。そうだったでしょう、みんな。もう忘れちゃった?

会場を埋めるファン全員が彼女のパートを心待ちにしていた。どのグループのファンであっても、誰のメンバーカラーのTシャツを着ていても、どんな色のペンライトを振っていたとしても、紗友希のフェイクの後では「fuuuuuuuuuuuuuuuuuuu!」と叫ばずにはいられなかった。彼女のパートのあとは、地が揺れるような喝采が自然にわいてホールを埋めつくす。それがハロプロでありハロヲタだったのだ。みんな彼女の歌を心の底から愛していた。「私たちが誇る歌姫・紗友希の歌を、みんな聴いてよ!」とハロメンもハロヲタも、おそらくスタッフも、ハロプロに関わる全員が思っていた。思っていたのに。

紗友希がハロプロを辞めると言うならば、周囲の大人たちは全力でそれを止めなければならなかったのです。せめて卒業イベントができるように、それまではなんとか、必死で説得するべきだった。紗友希自身が強固に辞めたがって、もうどうしようもなかったであろうことはなんとなくわかっています。それでも、なんとか説得してほしかった……。

紗友希はハロプロで文句なく一番歌がうまかったし、歌が上手くあり続けるために、子どもの頃から絶えず努力し続けていました。彼女はハロプロが掲げる「芸術至上主義」のいわば象徴と言える存在だったのです。そんな彼女が犯罪でも不倫でもない、ただの自由恋愛でクビになるというのは、はたから見たら「芸術至上主義が処女信仰に負けた」という極めてダサい結論に他なりません。私には到底受け入れられない結論です。極めて旧時代的な組織の、醜い末路としか思えないのです。実際、ニュースを受けてそのような外野の声がたくさん届きました。ハロヲタである私もそれにまったく反論することができません。ていうか私だってそう思うわ。

Juice=Juiceが主演したドラマ『武道館』の男性出演者陣の性的スキャンダルの多さを見るに(仮面ライダーメテオこと吉沢くんと仮面ライダーバースこと君嶋くんはどうか無事でいてほしい)、ハロプロのガチガチの恋愛禁止は「彼女たちを悪い共演者やスタッフから守るため」という要素がきっと多分にあるのでしょう。それはわかります。

それでも、私は紗友希の卒業コンサートが見たかった。なんなら円満卒業後に優里さんにハロプロに楽曲を提供して欲しかった。できたはずだよ。なんでできなかったんだ?私たちは、ミキティ10周年ライブで庄司さんが客席に表れたとき、歓声を上げて「庄司コール」をすることができるオタクなんだよ?その日の2ちゃんねる狼板に「同じ女を愛した男だからな」って書き込んじゃうのがハロヲタなんだよ?もっと私たちを信頼してくれよ。ていうか紗友希の一件の顛末を見る限り、誰よりも処女信仰が強いのは他ならぬ事務所自身じゃねーか!おたくのせいにするんじゃねーよ!!……と私は思わずにいられない。優里さんに「同じ女を愛した男だからな」と私たちが笑って言える日は来ますか?来てほしいよ。事務所さんは頑張ってくださいね。

ハロぺディア 同じ女を愛した男だからな

庄司智春、藤本美貴と結婚時のネットの声に感動「同じ女を愛した男だから許してやろうぜ」


庄司さん、筋肉を仕上げてきたことは高く評価しますが、ロマンスの腕の伸びと顔と体幹の角度が甘いので、次はそこを練習してきてくださいね。あとサビはちゃんと360度回ること。

さて17年前の矢口更迭後しばらくして、私はまたハロヲタに戻ってきました。『テニスの王子様』アニメ再放送のついでに見たアニメ『きらりん☆レボリューション』のOP「バラライカ」がたいへん素晴らしかったことが帰還の理由です。月島きらりちゃんの楽曲とアニメがあまりに素晴らしかったから、私はハロプロに帰ってきました。今ものすごく萎えている私もまた、月島きらりなみに魅力的なコンテンツと『バラライカ』なみの名曲が発表されれば、またハロヲタに戻るのでしょう。

よって今年は記述が短いです。以下に順位を置いておきます。

1位 涙のヒロイン降板劇 / つばきファクトリー

MVを見た瞬間に、Tsubaki Factory New Era !と叫びたくなる一曲。海外オタクのYouTubeコメント”New era for Tsubaki.” “Perfect start for a new era.”がすべてを物語っている。

小片リサちゃんという楽曲の核を失ったつばきファクトリーが出してきた新機軸だ。新メンバー4人も全員可愛く、個性的で、歌も上手い。現ハロプロ随一の歌姫であるきしもんが覚醒している。若い男性の間で流行している黒髪センター分けの髪とスタイルのよさが相まって、男性若手俳優のようだ。凛々しい。最高。MVもアイディアにあふれていて、小道具にお金がかかっている。顔のアップが多く、アイドルのMVらしさを忘れていないところもいい。

そしてなんと言ってもタイトルと歌詞が素晴らしい。タイトルは最初「『涙の』ヒロイン降板劇」と読んでしまって「おいおい、なんて攻めたタイトルだよ。いくらなんでも現状に寄り添いすぎだろう」と不安になったけれど、実際は「『涙のヒロイン』降板劇」であった。サビの歌詞「涙のヒロイン 降りる宣言 君の代わりはいるでしょう 私が私のこと愛さなくちゃだめ」から、それが伝わってくる。

歌詞はまるで、グループ一番人気だった小片さんの突然の脱退のあと新しいメンバーを加えて再出発するつばきファクトリーの状況にあわせて「あて書き」したかのようである。実際はあて書きではなく、山崎あおいさんが別の機会に提出済の歌詞がここで使われたという。この時期のつばきファクトリーに提供されたことによって、あまりにぴったりのタイミングで歌詞が現実に寄り添ってしまったことに、山崎さんは驚いたという。※ソース

歌を聴きながら「いったい誰が『涙のヒロイン』なんだろう?」と考えるのも楽しい。悲劇的につばきファクトリーを去ることになった小片さんこそが涙のヒロインと考えてもいいし、メジャーデビューをつかんで初舞台に立つ新人四人こそが涙のヒロインとも言えるし、この曲においてはセンターの立ち位置ではない樹々ちゃんの歌だと考えてもいいし、持ち前の歌唱力を存分に発揮して楽曲の柱になっているきしもんこそが涙のヒロインと思っても成立する。たくさんの女子一人一人の人生に合わせて、解釈が何通りも成立する歌詞なのだ。

そして最後はきしもんによるフェイクと「惨めな役は 似合わない 癪(しゃく)なスポットライト 躱(かわ)して つかもうぜ!華やかな Next ストーリー」で楽曲が終わる。素晴らしい。これまで泣いてばかりの悲劇のヒロインだった自分たちが、その悲劇から自力で脱け出し、この曲を手に次に進む。そんな現状にぴったりだ。つばきファクトリーは確かに再生した。それだけの力を持つ楽曲だ。

さて、ここからは私一人の勝手な喜びを書きます。

ルパパト好きの私としては、ルパパト第12話に車椅子の少女役として出演していた河西結心ちゃんが、前事務所であるアミューズを辞め一般の高校生になったあと、ハロプロのオーディションに合格して歌手デビューし武道館に立つ、という「物語」が見られたことがとても嬉しかった。ルパパト12話劇中の少女は、歌が大好きでステージに上がりたいという夢があるけれど、足を悪くして車椅子生活となり、その夢を諦めかけているという設定である。その物語の続きを見ているような、車椅子の少女が本当に数年後に夢を叶えたかのような錯覚に私は容易におちいった。大手事務所を辞めて山梨の田舎の一高校生として暮らしていた河西結心ちゃんが、ルパンイエローの事務所のオーディションに合格し歌手として武道館に立ったという「物語」は、まるで劇中の車椅子の少女の足が無事に治ってステージで歌う夢をかなえたかのような幸福な錯覚を私に見せてくれる。物語の中の少年がルパンブルーに触発されて一念発起したように、現実でも、ルパンイエローに触発された一人の少女が一念発起して自らの夢を叶えたのだ。結心ちゃん、ハロプロに来てくれてありがとう。

2位 愛してナンが悪い!? / モーニング娘。’21


モーニング娘。新アルバム『16th~That’s J-POP~』冒頭の一曲。

当初、このアルバムは私の琴線にあまり触れなかった。それはコロナのせいで楽曲を披露する場所がまったくなかったゆえであると、佐藤優樹ちゃんの卒業公演で私は気が付いた。娘。のエースであるまーちゃんの卒業公演を見て、私は初めて「娘。の楽曲の魅力はライブでこそ出る」という当たり前の事実にたどり着いたのである。遅いね。

ハロプロにおいては(時系列的に)一番最初にCD音源が収録される。そのため、その後何十回と行われるライブで歌唱力と表現力がどんどん上達した結果「CD音源が一番下手」という珍現象が発生する。口パクせずに生歌のライブを地道に積み重ねる若い音楽集団ゆえだ。その上にオタクのコール(コロナ以前)やクラップが乗るため、楽曲はさらなる別物に進化していく。その変化と成長こそがハロプロの面白さである。簡単に言うと、曲がライブで成長していくのだ。

ハロプロの楽曲はライブでどんどん洗練されていく。これを逆に言うと、ライブがない場合、曲が変わらない。こっちも聞き込むことがない。音源を聞く機会が減る。歌詞への共感やなじみも減っていく。娘。は、いやハロプロは、くりかえされるライブと公式から(昔は一部有志によって)Youtubeに次々とあがるライブ映像ありきの集団芸術なのだ。

そんな状況の中、ライブなし、音源を聴いただけで好きになった曲が『愛してナンが悪い!?』。ライブで聴いたらさらに好きになった。つんく♂さん真骨頂の一曲。

歌詞は明らかに高木紗友希のためのものであり、彼女を肯定するための歌詞である。愛して何が悪い。もちろん、何も悪くない。いや本当は紗友希のためではないと思うけれど、タイミング的にはそうとしか思えない時期に発表された。愛して何も悪くない。当たり前だ。あの三島由紀夫でさえ「少年がすることの出来る──そしてひとり少年のみがすることのできる世界的事業は、おもふに恋愛と不良化の二つであらう」と言っている。医学的に言えば、男女の恋愛を否定するのは、人類に「滅べ」と大声で叫んでいることと同じである。まあ別に世界破壊願望を持つこと自体はかまわない。反出生主義もよくわかる。しかし、それを他人に強要するのはまちがいだ。繁殖を否定されても困るし、女性の性欲を否定するのは女性の人権を否定していることと同じである。私たちには確かに肉欲があり、その相手を自由に選ぶ権利がある(もちろん相手の同意は必要)。肉欲のわく相手と一緒に過ごしたいと願う、その欲望自体を否定することは許されない(もちろん相手の同意は絶対に必要)。つんく♂さんありがとう。

さてこれが二番になると、「グーグーグーGood ! 親指が人気の基準じゃん アホらしい」とSNSのいいね!の数を競う世の中を憂いつつ、突然「シャーシャーシャーシャー洒落臭い 宵越しの恋愛」と、初恋の狂乱から急激に冷めた目線に主人公が変化している。いったい何があったんだ。1番の歌詞で「深夜焼き肉デート 親密じゃん」していた相手とは別れてしまったんだろうか?これまた味わい深い。そして最後は結局、人生の野望のために現実を見すえて、限界を決めずに想像力を発揮していくしかないよね!といういつもの結論に至る。これまた表現者たちの正しい現実主義で素晴らしい。バランスがとれている。

決めのパートの「Oh 愛して何が悪い!?」と「常識は非常識」を、入ったばかりの15期三人が順番に回しているところも好きだ。それぞれの声の個性が出ている。この曲がアルバムの一曲目に置かれているということは、つんく♂さんが新メンバーを軸にモーニング娘。の次の時代を考えているということである。よかった。

私がモーニング娘。に求めているのは「変化」である。大好きだった福田明日香がいなくなった23年前から、私が娘。に求めているのは常に「変化」である。変化が欲しい。それ以外はいらない。変化してくれ、モーニング娘。

3位 空を遮る首都高速 / 和田彩花


ハロプロの事務所は「ハロプロを宝塚にしたい」という野望があるんだな、と私が気付いたのはいつ頃だっただろうか。高橋愛ちゃんが宝塚の大ファンであったこと、その愛ちゃんが「宝塚には『すみれコード』があるけれどモーニング娘。には『モーニング・コード』がある。卒業して『モーニング・コード』がなくなったとたんに、これかぁ!って感じです」と発言した時(2011年11月27日帝国劇場での記者会見)だろうか。ハロプロエッグに大量に人材を投入し、そこからデビューさせたりグループを作り始めた時期だろうか。
① 25歳までの女子による
② 在京の
③ TVの歌番組にも出られる
「アイドル版宝塚」をハロプロは目指しているんだろうな、という意図を私は嗅ぎとりはじめていた。

その頃ハロプロを支えていたBerryz工房と℃-uteは、あまりに幼ない時期からあまりにも長い時間を固定メンバーで拘束していたために、新しいメンバーの中途加入を受け入れることはできなかった。メンバーもそうであったし、ファンもそうであった。Berryz工房と℃-ute(とその選抜ユニットであるBouno!)は結局最後まで卒業・加入制のグループにすることはできず、休止または解散した。

娘。以外に初めて卒業・加入制グループとして独り立ちできたのが、他ならぬアンジュルムである。アンジュルムは娘。以外のハロプログループで初めて、宝塚の一つの「組」にあたる存在になった。モーニング娘。が花組であるならば、アンジュルムは月組になったのだ。

宝塚の組にもそれぞれ得意分野とカラーがあるときく。モーニング娘。とアンジュルムにも、れっきとしたグループの色と存在意義がある。

モーニング娘。は結局のところ、どこまでいっても「つんく♂にインスピレーションを与える楽器」である。ではアンジュルムは何か。それは「日本における女性の自立を、女性自身が考えること」だと私は思う。まぁ、これをものすごーくおおざっぱに言うと、女性の自己選択権と自己決定権、ひいてはフェミニズムと呼んでいいのかもしれない。

これはあやちょの作った唯一無二の道である。そして、モーニング娘。には歩むことのできない道である。モーニング娘。は「つんくのインスピレーションを刺激する楽器」であることが最も強い命題のグループだから、「女性自身が考えて自己の表現を選択・決定する」という視点はどうやっても持ち得ない。それを持ったときは卒業するときであり、父性からの脱出こそが娘。卒業のメタファーとなる。

アンジュルムはスマイレージの創世期からずっと、あやちょがただ一人のリーダーであった。長い低迷期にも彼女は決してくじけなかった。大人の男性たちに「日本一スカートの短いアイドル」というキャッチコピーをつけて売り出された女性アイドルグループのリーダーだったあやちょが、自力でフェミニズムにたどり着いた。その成長過程こそがアンジュルムの核である。アンジュルムというグループの中に、一番太い、真ん中に通る骨を作った。アンジュルムの中心にはその柱が通ってしっかりと立っているから、新人として誰が入ってきても大丈夫なのだ。そんなグループになった。だからアンジュルムはモーニング娘。とは別の存在になれた。これはハロプロの新基軸であり、あやちょ以外の誰にも成しえなかった。


だから私があやちょに思うことはたった一つ。どんどんやれ。この一言しかない。他の誰にも真似できない創造性を持った思想家に、ほかに言えることなんてある?想像がつかなかったものを生み出した芸術家に、他に言えることなんてある?何もないでしょう。

あえてアンジュルムの姿勢を言葉にするなら「可愛いこともきれいになることも否定せず、自分の権利も主張しながら表現者として成り上がり、かつ幸せになる道を自分で模索する女性」あたりだろうか。若い女性ファンが増えるのも当然である。そしてその信念通り、アンジュルムの女たちは自分の頭で考えて、自分の野望のために行動していく。ハロプロにいる間がキャリア・ハイではない。その先でもいろんな道へ進んでいく。田村芽実ちゃんは本当に素敵なミュージカル俳優になった。めいめいが私たちハロヲタをふたたび帝国劇場に連れていってくれると、私は信じている。

ちなみにカントリー・ガールズは「かわいいだけでなんとかなる、か?」というデビュー時の秀逸なキャッチコピー通り、「かわいい女の子がかわいい服でかわいい歌を歌う、という生身の人間が続けるには厳しいほど純度の高いアイドルらしさをキープするために、メタ視点とギャグを織り交ぜてプレゼンする」という最高のコンセプトでけっこう成功していたのだが、桃子の引退とともにつぶされてしまった。Juice=Juiceは「研修生から歌唱力エリートを次々と選抜して、歌のアベンジャーズを作る」という新機軸を見いだし、これもいったんは成功していた。Juice=Juice最初のCDアルバムの一曲目が『選ばれし私達』だったのは、まさにその象徴であったと思う。Juice=Juiceは宝塚における「雪組」になっていた、と思う、朋子卒業で横浜アリーナを埋められるくらい動員できていたんだし。それなのに、今はそのコンセプトが消えている。これからどうするつもりなのかよくわからない。つばきファクトリーもまだ未知数だ。両グループにはきっとこれから2、3年かけて、新しい色が出てくるのだろう。期待しながらゆっくり待っている。

4位 愛されルート A or B? / アンジュルム


めずらしい三拍子の曲。この曲をもって卒業する、ももにゃこと笠原桃奈ちゃんの魅力が大爆発している。卒業直前最後のシングルでようやく卒業メンバーの魅力が開花して「何でもっと前からこれをやれなかったの!?」とファンが怒る。これもまたハロプロの恒例行事である。『泡沫サタデーナイト!』の鈴木香音ちゃんもそうだった。

おそらくこの現象は「星は爆発する前が最も輝きを増す」のと同じ原理なのだろう。辞めるからこそ、自分に知らず知らず課していた心のカセが外れて、好きなように自分を表現することができるようになる。結果として限界を超え、その人にしかない魅力が花開く。それにようやく周囲が気付く。でも、もう遅い。そのときにはもう若い少女の心はとっくによそにうつっている……。卒業のたびに、何回も繰り返されてきた悲劇だ。「私の魅力に気付かない鈍感な人」にはなりたくない!って私もずっと思っているんだけどね。むずかしいね。ごめんなさい。

5位 ミステイク / ハロプロ研修生ユニット(現OCHA NORMA)


2021年・ハロヲタが聴かされた回数ランキング第一位の曲。なぜなら、ハロプロがおこなったほぼすべての興業でオープニングアクトとして披露されていたためである。私も何回聴かされたかわからない。研修生オタクの皆さんはもう聞き飽きて、うんざりしていたはずだ。でも私はこの曲好きよ。特に4人時代の『ミステイク』が好き。デビュー前のメンバー4人が不安そうな面持ちで登場しながらも、どんなアウェーの会場でも力強く歌い踊っていた印象が強い。歌も上手だった。落ちサビ導入部の斉藤円香ちゃんの「だめね」(この動画の2:54)と、落ちサビ最後でウィンクしながら観客を指鉄砲でうつ石栗奏美ちゃんの「だから」(この動画の3:10)が好き。好きだったんだけど、新メンバーの加入によって両方ともパート割が変わってしまった。残念。

誰かを好きになりそうで、でもまだその気持ちを認めたくない。初恋の感情のコントロールを知らない、でも不器用なりに策略をめぐらす少女の心の揺らぎを描いた歌詞も最高だ。

6位 このまま! / モーニング娘。’21


ライブが楽しい、明るい曲。近年の娘。に提供された唯一の明るいアイドルらしい曲である。この曲だけを頼りに生きていくのはつらいです。つんく♂の初恋真っ最中の浮かれトンチキな楽曲をもっと出してください。私もそろそろ、ドクターストップがかかるほど「恋落ち」したいんです。よろしくお願いします。

7位 激辛LOVE / BEYOOOOONDS

山崎夢羽ちゃんがサビ後に一回だけ舌を出すのがアップになるところが好き(この動画の1:46)。そこを見るためだけに20回くらいMVをリピートしている。他のメンバーがあまり舌を出さないのはどうしてなんだろう?カメラに抜かれていないだけなのかな?みんなやってほしい。

2021年の夢羽ちゃんといえば映画『あの頃。』である。夢羽ちゃんは劇中で、当時のあややこと松浦亜弥さんに扮している。これがきちんと当時のあややに見えて、すごくよかった。

『あの頃。』という映画は、なんだか筋書きに「照れ」があった。照れないで!もっとはじけてよ!上京して、「神聖かまってちゃん」のマネージャーとして売れて、ベーシストとしてもフジ・ロック・フェスティバルにまで出て、コミックエッセイも出してTVにも出て、素敵なパートナーができて子どもにも恵まれ、ハロメンとも共演して、ついに映画化したぜ!主演は松坂桃李だぜ!ハロメンに仕事を作ってハロプロに恩返しもしたぜ!うはははははは!……という主人公の展開まで含めてこそ、うだつのあがらない若者の「成り上がり」物語だと私は思うのだが。そこまで描いてこそおもしろい、いやむしろそれこそが必要では?その「落ち」がないと、ただの謎の若者集団の謎の趣味と謎の盛り上がりとその終了と別れの話になっちゃって、読後感がわけわかめだよ!!……と感じてしまった。アイドルへの情熱がだんだん冷めていくところも、それぞれにアイドルよりも大切な何かを見つけて徐々に散っていくところも、それでも友情は細々と続いていくところも、病気とともに三次元女性に耐えられなくなり二次元にはまっていくさまも、忌憚なく描いてほしかった。そのなかで上京した主人公が「俺だけは音楽で成り上がっていく!一緒に馬鹿やってた昔の仲間と離れて、なんとか成功したぜ!でも心の中では当時のことを決して忘れていない!だから、この物語を描いた!」まで突き抜けてくれれば、私は『トレインスポッティング』と同じ味わいで楽しむことができたと思うのに。でも、物語はそのずっと手前で終わってしまった。

実際の原作では、コズミン(役名)が死ぬとき、主人公はすでに神聖かまってちゃんのマネージャーとして表立った仕事を順調に行っている成功者になっている。でも、あまりそうは描写してくれない。もっとガツガツしてくれ、主人公。もっと野心をもってくれ、主人公。もっと自我を見せてくれ、主人公。それがオタクってもんだろ。そこになんだか「かっこつけ」というか、「照れ」が見えてしまったのだ。

私はオタクなので劔さんのその後のご活躍を知っている。だから、映画の後を脳内補完して楽しむことができる。でもそれはあくまで作品外の予備知識だ。ちょっとだけでも映画内で示して欲しかった。本音を言えば映画の中で現実と交差して、劔さんが自分の過去のマンガを描く、さらにそれが映画になるところまでやってくれたってよかった。ちょっとメタフィクションくさくて萎えるかもしれないけど、そこはまぁ上手くやってもらって。原作の「ダメな若者ばかりだけど妙に爽やかな読後感」との差は、結局、主人公があの後どうなるのかよくわからないことにあるのかなぁと思った。

演出や楽曲、小道具の時代再現や役者さんの演技は素晴らしかったと思う。コンサート会場の客席の再現度も完璧だった。石川梨華ちゃん卒業コンサートにいた、大箱の卒コンだけにはチケット譲渡も辞さずに参加するお堅い職業の一人参加の高齢女性ハロヲタは、一瞬自分のことかと思ってしまった。物語全体で見ればあの女ヲタはなんで出てきたのかよくわからない存在だったけれど、観客である私が「おっ自分のことかな?」と思う人物が出てきたという事は、ハロヲタを細部まで描けているということなんだろう。たぶん。

2021年は以上です。2022年は今のところモーニング娘。の『よしよししてほしいの』一強の予定です。いまだ続く新型感染症のせいで新曲をリリースすることすら大変なご時世かと思いますが、一曲でも多く新鮮な曲が聴けることを楽しみにしています。(2022/10/30)

仮面ライダーオーズ10周年記念映画『復活のコアメダル』を見た

仮面ライダーオーズ10周年記念映画『復活のコアメダル』を見た。

※以下映画のネタバレしかないので、ネタバレを見たくない方は回避してください。

先行上映組が続々とファントムを生み出し各地でサバトが開催されているのを見ていたので、心の弱さを自覚している私は、ネタバレありの掲示板やブログやふせったーや映画レビューサイトを事前に熟読し、完全に予習してから映画館へのぞんだ。子どもを連れて行って大丈夫かを判断する必要もあった(だめだと判断して一人で行った)。

ちなみに私は、オーズ直撃世代の子どもとともに当時のTV放送をのめり込んで見ていた人間である。2011年放送当時、東日本大震災がおきて福島第一原子力発電所が爆発した。一日何回も緊急地震速報が鳴り響き、小刻みな余震が絶えず発生していた。放射性物質の被害がどのくらい広がっていて、いつまで続くのか誰にもわからなかった。そんな中、我慢や自己犠牲を徹底して否定し、人間の欲望を高らかに肯定しながらすべての誕生を祝福する「仮面ライダーオーズ」という物語に、どれだけ救われたかわからない。当時の私は日曜日の朝のために生きていた。先日行われていた仮面ライダー大投票でも、入れられる票はほぼすべて仮面ライダーオーズと将軍と21のコアメダルとMOVIE大戦MEGA MAXとTime judged allに入れた。小説版オーズも発売してすぐに買って読んだ。

中学生に成長した長男のみならず、当時生まれていなかった園児である次男も、いまだに13年前の商品であるDXオーズドライバーとDXメダジャリバーとDXタジャスピナーで遊ぶ。DXオーズドライバーは10年に一度の傑作玩具だと思う。変身して楽しい、メダル投げても楽しい、音を鳴らして楽しい、ただ眺めているだけでも楽しい。オーズになりきって「変身!」する子どものために、「オイこれを使え」とぶっきらぼうに言いながらメダルを投げさせられた回数は数知れない。津波の映像を流し続けるTVニュースを背景に、無邪気に変身して遊ぶ子どもの姿を私は今でもあざやかに思い出せる。彼らにとって火野映司はいまでも「ヒーロー」かつ「自分」であり、私にとって火野映司はすでに「10年育てた息子」なのである。

子どもを映画に連れて行くのをやめた判断は、結果として大正解であった。

私の視聴直後の感想は不覚にも「『がんばれいわ!!ロボコン』よりはましだったな」というものであった。事前の予習により心の中のハードルを最大限に下げた努力のたまものといえよう。『がんばれいわ!!ロボコン』を映画館で見たゲテモノ東映特撮大好き人間のねじ子にとって、今作は「思っていたよりも食べられる料理が出てきた」と感じてしまった。私の中の映画星取レビューは「がんばれいわ!!ロボコン<復活のコアメダル<スーパーヒーロー大戦」だな!どれも星1つだけど!

なぜなら、この映画はラスト5分まではそこそこ面白かったのである。ラスト5分で、ここまで積み上げてきたキャラクターの行動原理と物語のテーマが突然すべてひっくり返ったので驚いた。最初の50分とラスト5分(正確にはゴーダの裏切りのあたりから)で別の作品をくっつけたのではないかと思うほど、脈絡が離断しているのだ。

今からでも遅くないからアンクが腕にくっついてる映司が砂浜を歩く映像を作って、ED後に3秒でいいから流してくれないかな。まじで。そうしないと映画内ですら矛盾がはなはだしくて、見ていられないよ。「なんで映司くんが助かる手段があるのに使わないの?さんざん自分たちで『信吾のときのようにできる』『最後まであきらめるな』と言ってたのに?アンクくっつけたまま映司の体を治す旅に出る(たまにアンクが不貞腐れてどっか行っちゃって比奈ちゃんが怒るギャグ回がある)でよくね?何がダメなの?」という、視聴者の「誰もが」もつ疑問への答えは、この映画のどこにもない。

つまり、これは「映司が死ぬ」という「結論ありき」で作られた映画である。おそらくこの映画の作者(誰だか知らない)は「一個の命を戻すには一個の命の犠牲が必要」という等価交換の価値観を強くもった人なんだろう。それ自体は理解できる信条である。しかしそれは「仮面ライダーオーズ」という作品のテーマとは致命的に食い合わせが悪い。壊滅的なほどに合わない。だから最初の50分とラストの5分で物語が乖離してしまっている。「命の等価交換のお話がやりたいならオリジナルでやれ。オーズの10周年でやるな」としか言いようがない。

だって映司くんはすべてを救う手段を最後まであきらめずに考え、狡猾にそれを成し遂げるヒーローなのである。映画『将軍と21のコアメダル』で「ここにいる全員が家族だ」と言い放って悪役さえもだまし町民全員を救ったように、映司は誰よりも大きい欲望をもって目の前にいるすべての人間を救おうと最後まで冷静かつ強かに知恵をしぼる人間なのだ。この映画の中でさえ、そう語られていたではないか。アンクとジェネリック爆撃少女(なんで最後出てきたの?)を助けて満足して死を選ぶなんて、そんな小さい欲望で映司が満たされるはずがない。彼のもっている危うい自己犠牲的な側面はTV本編で否定されつづけ、最終回に「他人と手をつなぐことでより広い範囲まで手が届く」という結論にたどり着いたのではなかったのか。

震災による自粛が叫ばれる中、「我慢しないでいい」「もっと欲しがれ」「欲望こそが明日を切り開く」がオーズという物語最大のテーマであった。それは当時の私にとって、絶望の中で光り輝く生命賛歌であった。こんなテーマのヒーロー作品は他に類を見ない。自己犠牲こそを尊いものとして美しく伝え、欲望を否定する英雄譚はこの世にありふれている。そうじゃない、むしろ真逆だからこそ「仮面ライダーオーズ」という物語は今でも特別な人気があり、映司は唯一無二のヒーローであり続けてきたのだ。

そして、グリードであるアンクはさらに欲望に忠実な存在だったはずである。欲にまみれた粗暴な怪人が人に囲まれて生きざるをえなくなり、しだいに変化し、最後には自分を捨てて映司の暴走を止め自らは消えていくという「たった一度の献身」にいたる過程こそが、主人公と対になるこの作品のテーマであったはずだが、……なんでアンク突っ立って泣いてるのよ。おめーそんなタマじゃねーだろ。もっと欲しがれよ!伊達さんも医者でしょ。なに突っ立ってるのよ。胸骨圧迫のひとつもしろよ。私が好きだった伊達さんはそんなヤブではなかったはずだ。

そもそも当時壊れたはずのメダルが普通にもりもり残ってるのはなんで?どの時間軸とつながってんの?MEGA MAXとつながってる世界なら、風都も天の川学園も2021年には壊滅してるし、仮面ライダーWとフォーゼもここまで助けに来れないほど無力化されてるってこと?平ジェネFINALとつながってるならエグセイドまでのライダー世界も全滅に近いのでは?「全人類の8割死んでる」「メダルのことを知っているのはここにいる人間だけ」って、オーズが本編で助けたゲストキャラもみんな死んじゃったの?剣道少女もマイペンライも八景島シーパラダイスのトイレの福くんももういないの?そんなの嫌だよ!!あとなんかベルト増えてない?全部で3つくらいあるような。鴻上ファウンデーション製であるメダジャリバーを古代王はどこからもってきたの?メルカリで買った?ノブくんの剣とメダジャリバーで二刀流になったときは面白すぎてポップコーン吹き出しちゃったよ。東映の倉庫から引っ張り出してきたのかな?なんでもありだね!あとなんでアンクは王の中で紫のメダルを取り出して外に投げられるのかな?それができるならTV本編後半でやればよくね?映司グリードの悲劇がすべて台無しじゃない?そもそも瀕死の人間にしかアンク取り付けないはずなのに、お兄ちゃん別に瀕死じゃないよね?お兄ちゃんのこめかみに指をあてれば記憶を全部読めること、アンク忘れちゃった?なんで比奈ちゃんすら兄の人権をずっと無視してんの?そもそもアンクって寄生主の意思で追い出せるような生ぬるいシステムだったか?それならTV本編のお兄ちゃんは気合が足りなかっただけになっちゃうよね?そもそも古代王が復活して他のグリードを蘇らせたときに、アンクのコアメダルだけが「都合よく」復活していないのはどうして……?

……果てしなく「そもそも」が出てくる。これら多くの「ご都合主義」は、ラストの展開のためにすべて目をつぶらされている。いくらなんでも多すぎる。目をつぶりきれない。しかも目をつぶった先にあるのは、非合理で唐突な主人公の死の描写なのである。

お祭り映画ならば、ご都合主義でも私は許すんだよ。『将軍と21のコアメダル』に「なんで暴れん坊将軍がいるんだよ!なんで将軍がメダル持ってるんだよ!」などと突っ込むのはきわめて野暮だ。サービスでフォームチェンジをいっぱい出したっていい、お祭り映画ならば。ゴーカイジャーがオーズ全コンボにゴーカイチェンジしてガレオンバスターぶっ放したっていい。当時は呆れ果てたけどもうぜんぶ許す。いま思えば、あれだけうんざりしていた春映画だってまだマシだったんだな。だって「パラレル」だもん。全部なかったことにできるから。

恐ろしいことにこれは「完結編」なのである。「本編です!正史です!大人向けです!キリッ!」という姿勢でお出しされている作品なのだ。それならば、TV本編での成長がすべてなかったことになっている物語と、あふれるほど多い矛盾点から目をそらすことはできない。これらはシンプルに前作の勉強不足と設定無視であり、誰が制作したものであろうと、言いわけがきかない杜撰さである。考えれば考えるほど「公式が解釈違い」「公式が勝手にやったことだから私には関係ない」という言葉が口からあふれ出てきてしまう。どちらも、今までのオタク人生で禁句にしていた、絶対に言わないようにしている言葉なのに!

なお演者さんはみんな最高だった。浅井さんのオーズも線が細く軽やかでよかった。まあオーズだったのは古代王にやられる一瞬だけで、ずっとゴーダ(かアンク)だったんですけどね!だから高岩さんに似ていなくても別にヨシ!なんだよね!よくねえよ!!!!なんだかなぁ!!ゴーダのキャラは、映司のファンボーイ丸出しでアンクと絡みたがるウザさがこちらまで伝わってきて、結構よかったんだけどね!でも(ラストの展開に無理やりつなげるために)裏切りが唐突!あとコンボの音楽はちゃんと流せや!それがオーズだろ!タジャドルすら流れないってどーゆーことだよ!!(だんだん言及が細部になってきました)

それより何より。ヒーロー玩具好きとして「10年間オーズを買い支えた結果がこれかよ……」という失望感がどうしても、どうしても止められない。これは本当に困っている。私が貢いだ金で、私のヒーローが殺されてしまった。しかも整合性もなく、唐突に。そんな作品が作られてしまった。これが私には耐えがたい。

「仮面ライダーオーズ」は大人向けアイテムの販促が長期間続いている奇跡的なIP(のうちの一つ)だと思う。大人向けのプレミアムバンダイ限定商法が非常に上手くいき、関連商品がコンスタントに出続けていた。少子化が進む中、戦隊好きの私としては羨ましく思うほど、大人向け玩具展開がうまくいっている「金の成る木」だったと思う。だからこそVシネマを作る企画が通ったのだろう。私ももちろん、オーズに定期的にお金を使っている人間のうちの一人であった。オーズという作品は10年間ずっと「客はお金を使って幸せ → バンダイもおもちゃが売れて幸せ → 東映も作品を作れて幸せ → 客は新作が見れて幸せ、演者もときどき思い出してもらえて幸せ」という完璧な「正の」フィードバックができていた。そんな奇跡のようなヒーローだったのに。『復活のコアメダル』を見てからというものの、わたしはオーズはもちろんのこと、他の過去の東映特撮作品にお金を使うことをひどく躊躇している。ていうかやめている。だってそのお金で、私の大好きなヒーローやヒロインが殺されるかもしれないんだよ!そんな「死の商人」になってたまるか!

私にはオーズの他にも「続編を作ってもらいたいから」関連商品を買い続けているIPがあった。仮面ライダーマッハとかチェイスとかシンケンとかゴーカイとかルパパトとかね。私がルパパトを買い支えた金で作られる『10 years after』で、魁利くんや初美花ちゃんが整合性もなく死んだら私は許さない。許さないぞ!(※復コアオーディオコメンタリーで演者さんが「許さない、と思った」と語っていると聞いた。少なくとも演者さんとは解釈が一致しているようでほっとした、私も同じ気持ち)。確実にファントムになって暴れまわり一人サバトを開催する自信がある。オーズと同様に「いやぁ快盗は放送当時から死亡エンド案もありましたからねぇ」なんて、したり顔で識者に語られたりしたら、もう目も当てられないほど怒り狂うだろう(『秘めた思い』の歌詞を見るかぎり快盗には死亡エンドが想定されていたと思う)。まぁつまり今のわたしは目も当てられないほど怒り狂っているってことなんだな。ふふ。今から先に予防線を張っておく!香村さんが脚本じゃないなら、ルパパトの続編は作らないでいいから!!センパイジャーは香村さん脚本だからすごく楽しみにしている!魁利くんおかえり!元気にしてた?初美花ちゃんは元気?

こうなると「続編が作られない作品のほうが幸福」のみならず「作品を守るためにはファンが金を使わないほうがいい」という逆転現象まで起きてしまう。負のフィードバックである。役者さんが非協力的なIPのほうが幸せ、売れなかったIPの方が恵まれている、ということになってしまう。思い出の中でじっとしていてくれるのだから。実際に、私のニチアサの親は井上御大であり、私は仮面ライダーキバが好きなのだけど、キバは後から少しも汚されない。変なものを後から付け足されることもない。主人公が一年間命をかけて守った平和がおびやかされることもない。幸せだ。ちょっとマンホールが飛んでくるくらいどうということはない。

私は自分と自分のヒーローを守るために、この映画を脳内消去した。私の中の映司くんはいまでもアンクを復活する方法を探しながら世界を旅している。またはTV本編→『復活のコアメダル』→MEGA MAXでアンクとミハルが戻って時系列分岐、絶滅回避→平ジェネFINAL→映司くんの旅は続く……という「ゼルダの伝説」や未来トランクス形式の時系列だと勝手に思い込むことにする(メダルの数や出どころなど所々の辻褄はまったく合わないが)。あぁ、本当はこんなこと書きたくなかった。でもこの一週間私はずっともやもやしていて、この記事を書かずに鬱憤を消化することが結局はできなかった。

私は今でも、すべての人間に手を伸ばしてその手を必ずつかもうとしながらも、自己犠牲を徹底して否定し、すべての欲望を高らかに肯定する唯一無二のヒーローである仮面ライダーオーズを愛している。(2022/3/19)

追記:お口直しに押し入れから12年前のDVDを引っ張り出してきて、当時生まれていなかった子どもと一緒に踊りながら見ました。子どもが楽しめる動物クイズもあり、すごくよかったですよ。

2020年 ねじ子の子ども向けおもちゃランキング

※今更2020年末の記事です。新型感染症流行に免じて許してほしい。

ねじ子のおもちゃ大賞2020、簡易コメントつきです。

新型コロナウィルス流行下におけるステイホームの中、おうちで子どもたちと長時間過ごすために2020年はかなりたくさんの子ども向けおもちゃで遊びました。2020年おもちゃランキングのレビューを当時書いていたので、ここに載せておきます。自分で買って遊んだものの中からのランキングです。

2021年のハロプロ楽曲ランキングの筆がなかなか進まず、逃避してる間に書いた側面もあります。

1位 鬼滅の刃 DX日輪刀(竈門炭治郎)

素晴らしい。

まず、長い。DX日輪刀という玩具の素晴らしさはその「長さ」にある。きちんと長い。剣の長さと重さを感じながら、子どもたちが振り回すことができる。剣という武器は長く、重く、重心のコントロールが非常にむずかしい武器なのだ。だからこそ、持ち手から剣先まで十全にコントロールができた瞬間にもっとも強い威力を発揮する。身体的高揚感を味わうこともできる。刀とはそういう武器だ。ヒーローが長物をぶんぶん振り回して刃先をコントロールしているからこそ、かっこいいのだ。時代劇の殺陣やスターウォーズのライトセイバーだって同じ。チャンバラ・アクションの楽しさの起源はここにある。

近年の小児用の剣のおもちゃはどんどん刃が短くなっていた。新しい剣のおもちゃは毎年のように発売されていたけれども、少子化のせいなのか、原材料費高騰のせいなのか、安全基準のせいなのか、長さがどんどん短くなっていたのだ。「長物を振り回すと楽しい」という実感は、近年の剣の玩具から失われていた。

長さ比較。

上からビルドのDXドリルクラッシャー、ジオウで「ン我が魔王!」が口癖の人が使ってたステッキ(今検索したら仮面ライダーウォズのDXジカンデスピアーという商品名)、ゼロワンのDXアタッシュカリバー、アイドルのMIX口上そっくりな音声がやたらでかい音量で流れるニンニンジャーの刀、次男がこれまでの人生で最も長い時間遊んだおもちゃ・ルパンソード、リュウソウケン、そしてDX日輪刀。日輪刀が群を抜いて長いことが一目でわかると思う。

ちょっと昔の、長男のころのコレクションとも比較してみた。

上から仮面ライダー電王のデンガッシャー・ロッドモード、ディケイドのカードを入れる本の形の剣(DXライドブッカー。お気に入り)、Wのヒートメタルの棒をめいいっぱい伸ばした状態、オーズのメダジャリバー、鎧武の剣(これは二つの商品をくっつけてる。お値段二倍なのでちょっと反則)、DX日輪刀、キョウリュウジャーの獣電剣ガブリカリバー、シンケンジャーのDXシンケンマル、ゴーオンジャーのマンタンガン(変形して銃にもなる。お気に入り)。昔の商品と比べても、DX日輪刀はかなり長めの刀である。「長男と次男の間の数年に日本はこんなに不景気になったのか……」とも言えるし、「シュリンク・フレーションもいい加減にしろや!消費者舐めんな!親は気がついているぞ!」という憤りも、まぁ、ある。だからDX日輪刀の長さは素直に嬉しかった。これが売れたことはおもちゃ好きとして小気味よくすらある。いい商品が売れるのは嬉しい。

DX日輪刀は『鬼滅の刃』主人公・竈門炭次郎のなりきりアイテムである。なりきり玩具において最も重要なのは「子どもがなりきりたくなるかどうか」。つまり原作マンガおよびアニメの『鬼滅の刃』の充実度と没入しやすさこそが最も重要になる。

原作マンガ『鬼滅の刃』は2年ほど前から小学生の間で大流行していた。

炭治郎と禰󠄀豆子の迷いのない家族愛。迷いなくわかりやすい理想の上司であり、恵まれた環境にいながらも弱者を救うために自身の力をすべて使い、強い暴力や権力への誘惑には決してなびかない煉獄さん。その喪失。わかりやすく女好きでへたれで普通の少年・善逸。いつも前向きで元気に強く、ギャグもこなしてくれる猪突猛進な伊之助。悩み多いクールな二枚目の義勇。プリキュアやセーラームーンそのものである女子戦闘集団の理想のトップ・胡蝶しのぶ。その姉・カナエは小学生女子が憧れる「大人の女性」として完璧であったが、妹のために死んでいる。しのぶの下には、人に心を開けない妹分の少女カナヲがいる。姉たちを見ながら、カナヲも他の少女たちも成長する。どのキャラも正しくて優しくて強い。子どもたちが自分を重ねるのにぴったりだ。その中の誰かを選び、共感し、キャラクターになりきりって物語を楽しむことができる、そんな登場人物が取り揃えられている。

弱者や市民を守るヒーローを冷笑する風潮は、一切ない。悪役が可哀想な過去を少しさらしただけで(これまでどれだけの悪行を重ねていても)「悪には悪の事情がある。だから人を殺していても許す。感動した!」というような、悪役への奇妙なおもねりも一切ない。弱者を守るために必死に闘う真面目で真摯な鬼殺隊が、悪い奴らを倒す。悪役はすがすがしく倒され、みじめに醜態をさらして死んでいく。

ステイ・ホーム期間に、インターネット上の様々なサブスクリクションサービスで『鬼滅の刃』一期アニメが全話公開されていたことも効果的であった。学校が休みで死ぬほど退屈していた日本中の子どもたちが、親のスマホやiPadやAmazon Fire stick TVで鬼滅のアニメを再生したのだ。紙の鬼滅の単行本は、その時期ずっと品切れであった。鬼滅のアニメ一期は、新型コロナウィルス感染症という突然来た世界的なパラダイム・シフトとステイホームの時代に奇跡的にぴったりと合ったのだ。そうやってステイホーム中にため込んでいた視聴者が、アニメの続きを見るために映画館に向かった。みんないっせいに向かった。

『無限列車編』映画公開は、たまたま、本当にたまたま、コロナウィルス感染者数が比較的少ない時期であった。でもなかなか遠出まではできない。海外旅行はもとより、都道府県をまたいだ旅行や、人が多いイベントを躊躇する空気の中、一席あけて市松模様で座席を販売をしてくれる「近所の映画館」は、さまざまな人にとって格好の週末の娯楽となった。家族連れも安心して行ける数少ない目的地にもなった。そのタイミングの奇跡こそが映画『鬼滅の刃 無限列車編』400億円の原動力であったと、私は思う。一期アニメの連作の素晴らしさ、公開タイミングの良さ、そしてもちろん『無限列車』のストーリーの素晴らしさと映画としての出来のよさ、これらすべてが重なった結果だ。こんな私でも、息子のお付き合いで1回、4DXを体感するために1回、計2回無限列車に乗った。どちらも客席は埋まっていた。

DX日輪刀はデザインもいい。アニメで刀の周りに出現するエフェクトをそのままプラスチックで再現させて、刀のまわりにくっつけちゃおう!と最初に考えついた人は天才である。刀は二本入っており、長い方がもともとの炭治郎の水の呼吸の日輪刀、短い方が刀が折れた状態でヒノカミ神楽を初めて出したときの日輪刀だ。本物の炭治郎の声優さんの声で、水の呼吸 拾ノ型まで鳴ってくれる。ヒノカミ神楽は「演舞!」のみ。

子どもたちはさらに上を求め「鍔が外れないのかー!煉獄さんの鍔を入れたいのに!外れたらもっとよかった!」「ヒノカミ神楽を長い刀で出したいよー!」と言う。アニメではまだそこまで放送してないので、それは玩具でネタバレをすることになってしまう。現時点では無理だ。このおもちゃが売れまくって、今後そのような商品が出ることを期待しよう。

余談ですが、私の好みは当然のように甘露寺蜜璃ちゃんです。蜜璃最高にかわいいよ!!でもたぶん蜜璃の子ども用玩具は出ない。だって観測中の保育園の女児人気は圧倒的にしのぶさん>>>>>>>>>>>>>禰󠄀豆子=カナヲ>>>>>>>>>>蜜璃ちゃんだから……。どうして……。

2位 快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー -VS MEMORIAL SET-

最高。Wレッドの劇中音声が全部聞ける。とくに私の大好きな劇伴「快盗演舞」が変身音と名乗りの台詞とともに流れて嬉しい。

販売ページはここ↓
快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー -VS MEMORIAL SET-| プレミアムバンダイ 

2019年末、自分へのクリスマスプレゼントとして予約注文したあとでゆっくり商品説明の詳細を読んだが、このおもちゃには私の大好きなルパンイエローの要素が全然ない。ブロマイドに少しうつっているだけだ。

戦隊ブログvol.107 ルパパトのメモリアルアイテム、予約受付開始! | スーパー戦隊おもちゃウェブ | バンダイ公式サイト

商品開発者さんのライナーノーツがとても熱くて嬉しい、新規音声収録たくさんで嬉しい、私の一番好きな劇伴『快盗戦隊ルパンレンジャーのテーマ』がボタン一つで流れるだけでも1万円の価値はある。やったね!

しかしうみかちゃんの要素が全然ないな(小声)

全員分の音声を少しだけでも入れてくれてもいいのよ、ほら変身かけ声とか名乗りとかさ……。と思っていたのだが、まぁ結局、入りませんでした。メンバー全員の声を変身音だけでも入れてほしかった。その後発売されたDXリュウソウケンには全員分の音声が入っていて、とてもうらやましかった。

Wレッドの音声がたくさん聴ける(ほんの少しノエルも出てくる)のはとても楽しい。劇中再現もはかどる。当時販売のDX玩具にも音声対応しているので、そちらでの拡張遊びもできる。

※ここからはこの記事の再放送となります。

プレミアムバンダイはいつからか、私達ハロヲタの財布を狙わなくなった。当初はルパパトWヒロインのグッズだの何だのを出してきていたというのに、今はまったくない。最近のルパパト商品発売ラインナップを見ても、プレミアムバンダイはハロヲタの方を向いていない。Wレッドとエックスの商品ばかりだ。

これはルパパトという作品およびWレッドとノエルにたくさんの新規ファンがついて、金銭化のめどが立っているということなんだろう。ハロヲタを頼りにしなくてもルパパトという商材が購買力を得たのだ。素直に喜ぶべき、素晴らしいことだ。

癒してハロプロ てれびくんのルパパトヒロインDVD 本編16分で6500円っておかしくない?

ハロプロニュース : 【工藤遥効果】子供の味方「てれびくん」がおっきなお友達向けの商売に手を出してしまう

いつかのてれびくんDVDのように、おたくの財布を狙われまくって足元を見られまくって、ハロヲタの間でも激しく意見が割れてしまうような事態はもう二度とごめんだ。工藤ファンの中からも「あんな商品をあんな値段で買ってはいけない」「あんなぼったくりDVDでもファンは買う。足下を見られてるんだよ」「あんな値段でDVD買った奴がいるから、小学館は調子に乗って15000円もする超全集を出すんだ」という声も聞いた。その意見は正しい。私も当時、怒髪が天をついた。私は古い人間なので10年前に『てれびくん特せい 仮面ライダーオーズ超(ハイパー)バトルDVDクイズとダンスとタカガルバ』(本編23分)を送料込1250円で購入したことを、きちんと覚えている。物価高騰を加味したとしても、本編16分で6500円はあまりに高すぎる。ファンを分断するような売り方は二度とごめんだ。ごめんなんだけど。

……相手にされないとそれはそれで、嬉しいような、少しさびしいような。

3位 きめつたまごっち

2020年は結局ずっと鬼滅の年だった。この商品は「開発者はとても鬼滅が好きなんだろうな」とわかる仕様で、すごくよかった。きめつたまごっちは鬼滅の本編にそった成長をみせる。

最初は名もない「癸」の鬼殺隊士が登場する。この初期キャラクター(うちでは「村田さん(仮)」と呼ばれている)を「死なない」程度のギリギリで最大限ほおっておくと、伊之助になる。解釈一致。ほどほどに世話をして、あまり鬼を倒さないでいると「甲」の隊士には出世せず、かまぼこ隊のどれかになる。ちなみに炭次郎を育てたあと丁寧にお世話をしていると禰󠄀豆子を連れてきてくれる。解釈一致。

村田さん(仮)をきちんと世話して定期的に現れる鬼たちを三回以上倒すと「甲」に出世する。その後、柱の誰かに分岐する。私はいつもご飯とお茶をたっぷりあげすぎてしまうので、蜜璃ちゃんに育つ。これまた完全な解釈一致。蜜璃ちゃん今日も最高にかわいいよ!!!(女性アイドルにかけるかけ声)

……私は大満足だが、息子たちは不満そうである。そしてリセットされてしまう。死ぬか、リセットするか、電池が切れないと次のたまごっちを育てられない仕様だからだ。

さまざまな鍛錬を何回も繰り返すこと、それがノーミスでできたか否か、鬼を殺すスピード、食事量などによってどの柱になるかの分岐先が変わる。これが結構むずかしく、なかなか狙った柱に育ってくれない。狙った進化先にするための発動条件は公式からいっさい発表されていない。ネット上にあるユーザーの経験談に頼るしかないのだ。

そして──これが最も重要なことだが──鬼滅たまごっちたちはあっさりと死ぬ。鬼に襲われて、本編通りにあっけなく死ぬ。たまごっちを家に忘れて仕事に行くと、帰ったら死んでいる。たまごっちの存在を一日忘れると、もう死んでいる。本編と同様に、決して生き返らない。なんたる解釈一致。原作と同様に、隠(カクシ)の皆さんがやってきて亡骸を持ち去っていく。

あんなに頑張って煉獄さんにしたのにさぁ!!!私の馬鹿!いまわのきわの煉獄さんに「俺の方こそ貴女のような人に生んでもらえて光栄だった」と思ってもらえるような立派な母に、私はなれていたでしょうか?どう考えてもなれてないです!

この散り際のあっけなさと命の取り戻せなさも非常に『鬼滅の刃』らしい。それと同時に、往年のたまごっちと同じ楽しみ方もきちんとできるので、これは非常によくできたコラボだと思う。一日一回特に意味もなくお館様や無惨様や珠代さんの猫が出てきてくれたり、第二弾ではしのぶさんがカナヲちゃんに進化したり、煉獄さんのもとへ弟くんがたまに来て掃除してくれたり、細かいイベントも作り込まれていてやりがいがありました。

4位 DXゼロツープログライズキー&ゼロツードライバーユニット

仮面ライダーゼロワンのおもちゃはとにかくデザインが最高。可動変形も最高。機械仕掛けの音声も最高。

これは従来ならば最終フォームにあたる仮面ライダーゼロツーに変身するための追加玩具である。ゼロワンドライバーのパーツを一部外して、上からつけるシステムもすごく面白い。見た目が大胆に変わって楽しい。

TV本編中の仮面ライダーゼロツーは、コロナの放送中断が重なった不幸によって、ほとんど活躍の場がなくなってしまった。それはもちろんしかたのないことであり、そのハンデをもってしても、ゼロツーのおもちゃは最高におもしろかった。映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』でゼロツーの役割がとても美しいかたちで新しいイズに引き継がれたのもよかった。

ただし!ゼロワンTV最終回の「きみはイズだ」という或人の発言は、ヒューマギアという商品の存在意義、ヒューマギアに自我を認めるか否かという古典的議題への結論、或人のヒューマギア製作会社の社長としての社会的責任、つまり一年間積み上げてきた物語と「主人公のヒーロー性」をすべて台無しにする壊滅的台詞だと思う。あれはいったいなんだったんだ。

5位 ポケットモンスター スマホロトム

気の抜けた音声がとてもいい。ポケモンのアニメが新作になるたびに出る、液晶つきのおもちゃである。3DSやSwitchでポケモンの本編をやるにはまだ早い幼児向けの商品だ。簡単な物理操作でポケモンをゲットして、図鑑の完成を目指すことができる。ポケモンにふれてみたい、でもまだ数万円するビデオゲームを買い与えるには早い年齢の保育園・低学年幼稚園児にぴったりだ。

なんといっても玩具としての寿命が長い。これがスマホロトムの最大の利点である。3年間は使える。ゲーム本編ができるようになればこのおもちゃは不要になるが、それでも3年間は使える。ありがたい。

写真右は同機種の前の型、2018年発売の「ポケットモンスター ウルトラゲット! ロトム図鑑」である。2つの物理ボタンが「決定」と「戻る」にあたり、横についてるロトムの手(棒)を回して上下を操作する。液晶はタッチ対応してない。写真左、後継機であるスマホロトムは2020年発売。きちんとスマホっぽいユーザー・インターフェイスになっている。液晶もタッチパネルで、液晶タッチとホームボタンで操作する。自分のスマホが欲しいけれど、当然まだ買ってもらえない子どもたちの「憧れ」にぴったりフィットしたユーザー・インターフェイスに進化しているのだ。素晴らしいね。

6位 仮面ライダーセイバーのなりきり玩具類(DX聖剣ソードライバー)

2020年の園児用クリスマスプレゼント筆頭商品。次男はセイバーが大好きである。「剣で変身するライダーって他にいないでしょ。かっこいい」がその理由だそうだ。なるほど、確かに。セイバーのベルトをもらって本当に嬉しそう。変身ギミックは三冊並べて剣を抜く、という過程で、オーズドライバーにそこそこ似ている。

仮面ライダーセイバーのベルトには、初期装備である「プッシュ必殺技」ができないという致命的欠点があった。プラスチックのパーツが干渉してぶつかりあうために、ページを押し込むことができない。無理やり押すとミシミシ音がして、ライドブックのページ下部のプラスチックがへこんで傷がついてしまう。やりすぎると折れそう。そもそもあまりに堅く、うちの個体では大人が押しても必殺音が鳴るところまで至らなかった。子どもはそのギミックに気づいてすらいなかった。分解して改造したブログなどによると、内部のプラスチックのパーツ形状の不備で、単純な設計不良のようである。

プラスチックのおもちゃを傷がつくほど強く推すことを、4歳児に教えることはできない。おもちゃを壊してしまう。保育園や児童館のおもちゃ、友人に借りたおもちゃを子どもが同じくらいの力で押すことを覚えてしまったら困るから、プラスチックが壊れるほど強い力でおもちゃを押せとを推奨することは私にはできない。

きちんと試遊して欲しかった。対象年齢の子どもを使って試しているとは到底思えない。きっとコロナのせいで細部を作り込む時間がなかったり、工場との伝達がうまくいかなかったりしたのだろう。それでも、一万円近くする子ども向けおもちゃで大事なギミックが一つ死んでるのはきつい。そしてなによりも、これを「仕様」とし、メーカー対応がなかったことに私はとてもがっかりした。初期ロット以降はバンダイが対応してくれるかと思って、クリスマスまで待っていた親御さんもそこそこいたと思うのだが……。今どきの親子はTwitterやYouTubeでレビュー動画をじっくり見てからおもちゃの購入を決めるから、商品の不備にごまかされたりはしないんだよ……。

さてここからは少し話題を広く、コロナによるパラダイム・シフト後の仮面ライダーについて書いてみる。

悲しいことに、幼児の間で、仮面ライダーと戦隊の知名度がどんどん減っている。恒常的で手軽な安価の見逃しネット配信が存在していないからだ。(TTFCにいきなり1000円払って入る人はよほどのマニアしかいないし、マニアはすでに全員入っている。)いまや、特撮番組そのものよりも特撮玩具系Youtuberの方が子どもたちに名が知られているかもしれない。

子どもたちには、ネットで無料または、親がすでに加入している配信サイトで見られるコンテンツしか「存在すら」していない。それだけでも見きれないほどのコンテンツがある。

前述の『鬼滅』はもちろんのこと、『パウ・パトロール』(NetflixとHulu)、『ウルトラマン』シリーズ(YoutubeとAmazon Prime)、『すみっこぐらし』(Amazon Primeで見た映画が最高でした)、『フォートナイト』と『マインクラフト』(どちらもオンライン通信が無料。だから子どもに強い。ちなみにスプラトゥーンやあつ森やスマブラのネット通信対戦には、有料のNintendo Online加入が必要。年間500円しかかからないが、それでも子ども人口の差はそこで大きく出る。親がゲーマーでないと厳しい)。これらの商材の子ども向け利用率の高さの正体は、(子どもたちにとっては無料の)ネット配信の恒常性だと私は思う。

※『フォートナイト』はオンライン対人バトルロワイヤルであり、CERO:C(15才以上対象)のゲームである。小学生向けの児童雑誌「コロコロコミック」の『フォートナイト』の連載漫画の巻末には必ずこのような説明ページが入っている。

さて、今の話題は仮面ライダーシリーズだ。

2019年7〜9月頃に、それまでAmazon Prime Videoにあがっていた有名東映特撮TVシリーズが軒並み配信終了した。具体的には、TVシリーズの仮面ライダーカブト・仮面ライダー電王・仮面ライダーディケイド・仮面ライダーW・仮面ライダーオーズ・仮面ライダードライブ・仮面ライダー鎧武など。名作映画の『仮面ライダーW FOREVER A to Z/運命のガイアメモリ』『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX』『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』など。そしてクソ映画として誉れ高い『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』などもだ。ライダーも戦隊も、Amazon Prime Videoの動画見放題作品がほぼなくなってしまった。

なぜこれら過去の名作が突如レンタル扱いになったのかはわからない。その半年後に訪れたコロナ禍と、それに伴うステイホーム需要下においても、これはまったく変わらなかった。非常にもったいなかった。緊急事態宣言下において、仮面ライダーを追加料金なし配信で見られるサブスク環境はdTVかHuluくらいであった。どちらも入っていないご家庭が多いだろう。ちなみに私のHuluは、見たい作品があるときだけの限定契約である。最後に使ったのは何年前だろう?子どもがアンパンマンにガチはまりしていた時かな?

現行作品は無理だというなら、東映特撮は今すぐ、過去作(特に名作と言われている作品)を有名どころのネット配信に全話まるごと永続的にあげておくことを私は強くおすすめする。そうだな、仮面ライダー龍騎と555とWとオーズとエクゼイドとビルド、デカレンジャーとゴーオンジャーとシンケンジャーとキョウリュウジャーとトッキュウジャーとルパパトあたりがいいかな……。これらをネット上のどこか、できればYoutubeかAmazon Primeで、いつでも全話見られるようにしておくことを本気でおすすめする。まじで。そうしないと、子どもたちがライダーと戦隊を知らなくなっていってしまう。

※これを書いた2021/2/28はまだそうでした。2022年3月からようやく、Amazon Primeに一部の仮面ライダーと戦隊シリーズが復活してきています。現行作品も、戦隊は2022年3月から、ライダーは2022年9月からようやく、Amazon Primeでアーカイブが配信されるようになりました。これは同業他社のウルトラマンのネット展開のフットワークの軽さと比べると明らかに遅く、コロナによる巣籠もり需要を逃してしまったように感じます。

2020年はこんな感じです。2021年はDX日輪刀(胡蝶しのぶ)がきっと私の中で一位になるでしょう。いや、煉獄さんのDX日輪刀が出るなら、煉獄さんかな。(2021/2/28文筆、2023/1/24 uploaded)