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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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2004年10月号 腐ってもガイドライン順

ガイドライン(医師国家試験出題基準・厚生労働省刊)がついに発売されました。製作会社が癒着したり瘢痕治癒したり潰瘍になったり、紆余曲折しつつよう やっと生まれた新ガイドライン。●●円です。お近くの医学系書物が売っている本屋さんでパラパラと立ち読みしてみましょう。はっきり言ってクラスで一冊共同購入で十分と貧乏人のねじ子は思いますが、そんなことを言うと厚労省から刺客が送られてきそうなので、黙っておきます。言ってるか。でもでもガイドラインって何?そんなもの必要なの?皆さんそう思いませんか?

正式名称:医師国家試験出題基準。その名の通り国試に「何が出るか」の指標です。この世には星の数ほどの病気があり、新しい病気が生まれては消えていま す。それら全てを勉強し暗記しろ!と言うほど厚生労働省も鬼ではありません。星の数程の病気のうち「これしか出さないよん」と決めているのがガイドライン なのです。そう、国試にはガイドラインに載っている病気しか出ません。逆にどんなにマイナーでもガイドラインに載っている以上、出る可能性があります。

そしてここが最も!重要なところですが、

実はこれまでの国家試験の問題は、ガイドラインの順番に出ていたのです!

これが、ガイドラインが神といわれている所以です。

例えば去年の問題を解いてみましょう。臨床問題なら必ず、産科→新生児→精神→皮膚→眼科→耳鼻→肺→消化器→循環→血液→神経・整形→腎ウロ→内分泌→免ア膠→感染→麻酔救急、という順番に必ずなっていることに気がつくはずです。

※今回のガイドラインでは産科→新生児→精神→皮膚→眼科→耳鼻→肺→循環→消化器→血液→腎ウロ婦人→神経・整形→内分泌→免ア膠→感染→麻酔救急 と若干変更になった模様

例えば、回盲部病変でクローン病と腸管ベーチェットで迷ったら。その問題の周囲を見渡してみましょう。ガイドラインにおいてクローン病は「消化器」の項に 含まれ、ベーチェットは「膠原病」に含まれています。よって、その問題が大腸癌の前にあればクローン病であり、SLEの次にあればベーチェットなのです。はっきり言って滅茶苦茶ですが、本当にそうだったのです。現実に当てはめると「うーん、512号室の患者さん何で熱出てるのかよくわかんないナ。511号室が慢性C肝で、553号室が胆嚢炎だから、肝臓か胆嚢の病気であることは間違いないんだけど」てな笑える状況になりますが、これは結構使えるテクニックであり、ねじ子などそれで国家試験を乗り切ったようなものです。

問題文を読みます。治療法を聞かれていたとしても、必ず頭の中でまず診断を考えるはずです。その「診断」を、頭の中で思い描くだけでなく、必ず問題文に書きましょう。ねじ子はこんな風に書いてました。そして診断ができない問題が出たとき、前後から推測していました。

国試にはいくつかの法則があります。それを理解することがダメ受験生が国試に一発逆転合格するコツです。そしてその最たるものが、この「腐ってもガイド ライン順」なのです。これが良い事だとは決して思いません。今回は、ガイドライン順じゃないかもしれません。でも、頭の片隅にこのことを入れておいて下さ い。ひょっとしたら、皆様のお役に立つかも、知れません。

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