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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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知恵のプリキュア・キュアアンジュは医者になるのかな なってくれ このご時世だからこそなってくれ

HUGっと!プリキュア最新回(第27話)、産婦人科の女医さんが赤ちゃんを取り上げたあと、「大変だよ。でも、この仕事、最高だよ!」と快活な笑顔で宣言したシーンで、私は号泣してしまった。馬鹿みたいに声を上げて、おんおん泣いた。

私はこの1ヶ月ずっと、東京医科大学のニュースに傷ついていた。女子学生が受けた圧倒的で理不尽な差別。そしてその後に世をはびこった、病院というブラック企業からの離職者が多いことを性差のせいにする身勝手な言動の多さに、私はとても苛立ち、傷ついていた。プリキュアで号泣する自分を見て、私は初めて自分が深く傷ついていることに気が付いた。

私が私の誇りにしている医学という学問そのもの、勉強して勉強して勉強しまくったゆえにつかんだ様々な試験での評価、医者として積み重ねてきた経験、そのすべてを、ただ私の性別ゆえに、突然、無にされてしまう、そんな恐怖感。私が私の性を選んだわけではないのに、性別ゆえに、正当に評価されない世界であったことの恐怖。実際に、女というだけで学ぶ機会さえも奪われてしまった後輩たちがいる。自分の住む医学という世界がそんな修羅の国であったことに、私は根源的な恐怖を感じた。恐ろしかった。

私は、私よりも先輩の女医に「医者って、最高の仕事だよ!」と言ってもらえて嬉しかった。ひどく励まされた、たとえフィクションであっても。私はただ、私よりも先を行く先輩女性に、「医学は最高の学問だよ!」と言ってほしかったんだ。プリキュアを見てそのことに初めて気が付いた。

だから、私も。私より若い、医学部を目指している女子学生さんたちに向けて、言います。アジテーションはあまり得意ではないのだけれど、差別撤廃運動というものは差別を受けている当時者の熱意のこもった言葉のみを栄養源として前に進んでいくものだから、いまここで言います。

医学部を目指している女子学生の皆さん、どんどん医学部を受けてください。
どんどん医者になってください。
勉強の手をけっして止めてはいけません。

私はあなたたちを歓迎します。
他の誰がなんと言おうと私は、あなたたちが白衣を着て、私の目の前に現れるときを待っています。

今、あなたたちはニュースを見てきっと不安になっていることでしょう。
医学界全体が女医を歓迎していないかのような印象を受けている人もいるかも知れません。
でも、私は今ここで、胸を張って言います。

女性はもっと医者になるべきですし、女医はもっと増えるべきです。

そのソースは米医学誌「JAMA Internal Medicine」に発表されたハーバード大学公衆衛生大学院の「医療施設での治療で女性医師が担当した高齢者は、男性医師が担当した場合よりも生存率が高く、再入院の程度も低い」とする研究論文です。それと、世界的に見ても日本は女医の割合が少ないという事実をもとに、「日本の女医はもっと増えるべきだ」と私は考えています。

でもそんなことよりももっと感情的に、もっと個人的に、もっと力強く、私はいま、逆風にさらされながら勉強を頑張っている後輩女子たちを応援したい。だってそれは、過去の私そのものだから。

ほかの誰がなんと言おうと、私はあなたたちを歓迎します。
不安になっている受験生の皆さん全員にエールを送りたい。
ひとりひとりを抱きしめに行き、温かいミルクとチョコレートをあげたいくらいです。

ふぅ。書きすぎちゃった。ねじ子はいにしえのオタクなので、語りだすと長いのです。Twitterには向いていません。(2018/8/18)