ねじ子web

医師兼漫画家 森皆ねじ子

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2004年7月号 まずは模試でも受けてみよ

さてさて前回、去年の過去問を流し読みしてみた諸君。次に君たちがやるべき事、それは実戦になぐり込みをかけることだ!国家試験における実戦、それは模 擬試験。「えっ突然、模擬試験!?そんなの不安だよ!模試は少なくともQB一周解いた後でないと!」などと言っている諸君、笑止!!アムロだって突然ガン ダムに乗ってザクを倒し、立派な戦果を収めたではないか!!…それはさておき。とりあえず初めはまっさらな状態で模試を受けてみましょう。そうTECOMです。MECです。どちらでもかまいません。どれを受けたらよいのか迷ってる方、とりあえず参加人数の多い模試は受けておいた方が無難です。最低限としてはTECOMをラストの2,3回受けておけば十分だとヘタレ代表のねじ子は思いますが、体力や時間の余っている方はどんどん受けましょう。実はねじ子式ヘタレ勉強方のキモはすべて「模試」にあります。模試を100%使いきることが国家試験合格への最も近い道です。

模擬試験の一番のポイント、それはいやがおうにも問題を真剣に解かされることです。それも国家試験と全く同じ状況で。QBを解 いてると見たくもないのについつい下の答えを見てしまう意志の弱い貴女、いつも「どうせ腎盂腎炎の問題だろ」と決めてかかっている貴男。模試ではそうもい きません。自分のまっさらな実力のみで、限られた時間で解かなければいけないのです。思わぬ失敗もするでしょう。なにより「何が出てくるか開けてみるまで わからない時間割」「思ったよりもずっと長くて3日間集中力が続かない」「A問題の中でも問題の順番がバラバラで分野を読めない」「どれが必修でどれが各 論なのかわからない」「時間が意外と余る」など、実際に受けてみないとわからない事がたくさんあります。

ねじ子が実際に第2回TECOMを受けた当時、休み時間ごとに問題の表紙に書いていた感想をあげてみましょう。

・なんでいつも産科からなの?
・C問題:長文。2つ選ぶのを忘れがち。注意!
・内分泌まったくわかんないよー
・なんか風の通り道にあたって寒いんですけど…
・E問題:必修。常識問題と公衆衛生ってカンジ。
・体力必要。前日はよく寝てよく食うこと!
・G問題:総論・一般?公衆衛生天国。問題数多い。2時間なので途中ブレイクが必要
・心電図やらなくちゃ…
・ちこく厳禁
・I問題:臨床総論?時間はたっぷり、でも集中力続かない。試験時間長いので必ず前にトイレに行こう
・できなかった問題は派手にチェックをつけて後で見直ししよう
・見直しには5分必要

勉強ができないのは勿論のこと、時間配分に気を取られ、2つするはずのマークを1つしかせず、ただでさえ足りてない実力が環境によってますます発揮できていないのがよくわかります。皆さんも模擬試験が終わったら、色々感想を書いてみましょう。そこには、本番で焦らないですむためのポイントが詰め込まれているはずです。そしてねじ子は時間割がさっぱりわかっていない自分に気がつきました。「どれが必修?どれが臨床・各論?ていうかナニそれ?」ねじ子はさっぱりわかりませんでした。  というわけで次回は模擬試験編part2、時間割と必修を見分けろ!です。

今月の一言

2004年6月号 とりあえず過去問でも見てみましょう

いよいよダメ研修医ねじ子にも後輩ができる季節になりました。がむしゃらに人の後ろをついて動く事しかできなかった1年目を経て、ようやっと周りが見えてくるようになる(らしい)2年目。今は学生の皆様も、いつかこんな気持ちを味わうのでしょうか。

さて何をやるにしても「はじめの一歩」というのは気が重いもの。これを読んでいる皆さんはもう国試勉強、始めました?え、もうとっくに始めてるって?それどころかもうアプローチ1周終わった!?偉い!こんなページ読む必要なし!では一体「はじめの一歩」は何をしました?やっぱりQB?

これまで黄金パターンといわれている勉強法、それは「国試問題集(QBやアプローチ)を始めの一冊目の一ページ目からこつこつと解いていく」というものです。しかし。これがかなりの難行苦行。俺っちは3日で挫折してしまいました。だってやってもやっても全然進まないんだもん!その割に立て続けに潰瘍性大腸炎ばっかり出てくるし!その時だけは答え覚えちゃっててイマイチ実力が付いた気がしないんだよネ!臨床問題がやっと終わったよ…と思ったら、めくってもめくっても一般問題の嵐。…これ、終わるのか?あぁ空はこんなに青いのにどうして私はこんな所でお部屋にこもっているのかしら?…ここら辺でヘタレねじ子はQBを放り投げておんもに遊びに行ってしまいます。でもでも。こんな風にして始めっから国試勉強が嫌になってしまうのは非常に勿体ない。

ねじ子お勧めの国試勉強「はじめの一歩」、それは去年の再現問題集をとりあえず流し読みしてみることです。読み物感覚でかまいません。「解く」必要すらありません。本気でアレを解こう!とすると6時間×3日間もかかってすげぇ大変です。「はじめの一歩」にしてはずいぶん敷居が高くなってしまいます。導入はもっと簡単であるべきです。

再現問題集の解説ってのはたいてい別冊になってます。解説本だけ持って、行き帰りの電車の中ででも、ざっと読んでみましょう。問題文を読んでみて、1分くらいで答えを予想してみて、そしてすぐに!解説を読みましょう。たまに「すげぇ簡単」などの受験生の声が書いてあって「どこがすげぇ簡単だ!!さっぱりわからん!あぁ解けない私馬鹿だわもうダメ国試落ちちゃう地球の皆様さようなら」と小一時間へこむかもしれませんが、気にせず読み飛ばしましょう。落 ち込んでる時間があったら次の問題にさっさと進むのがポイントです。そして、国試には中学生でもできそうなすげぇ簡単な常識問題があること、かといって 「診断もつかないよう!それどころか治療法だって!?わかるもんか!!そんなもんわかってたらもう医者になっているよ!!」と言いたくなるような問題もあ ること、異常に公衆衛生が多いことなどを実感しましょう。そして今の実力で国試問題はどのくらい解けるのかを肌で感じましょう。

受験生が陥りがちな罠、それはまじめに問題を「解こう」としてしまって「あぁ解けない地球の皆様(以下略)」と問題を解くのをそっちのけで落ち込み、逃避し、時間をロスしてしまうことです。解けなくても全然かまわないのです。だってまだ勉強はじめてないんだもん。むしろ今できないのは良いことだと思いましょう。これから伸びるばっかりなんですから。

今月の一言

2004年5月号 医師国家試験は自転車免許の試験と同じだ!

今年の国家試験も発表となった。第88回国家試験はX2問題が急激に増加したとのことでアワを喰った受験生の皆さんも多かったであろう。しかも今年からガ イドライン変わるらしいし。困ったもんだ。どうしようってな感じである。そんな迷える皆さんに国家試験のねじ子的解釈を指南しようというこのページ。

さてさて突然だが今回のテーマを高らかに叫ぼう!それは「医師国家試験は自動車免許取得試験と同じ!!」である。

君も自動車免許の試験、受けたことあるかい!?一度でも受けたことのある皆さんならよーくわかるだろう、ものすご~く底意地の悪い引っかけ問題が満載の試験だということを!!その一例を挙げよう。

「図の標識のある道路では、定員17人のマイクロバスは通行できる。」

知るか!!…気を取り直して解説を見てみよう。「乗員定数11人以上のバスは大型乗用自動車になるので通行できない」だって。11人だろうが17人 だろうか知るわけがないというものであろう。次、つぎ。「原動機付自転車を押して歩いている人は歩行者と見なす」え、これは○でしょ?習ったよ?…答えは ×。「エンジンを切って押して歩いて、初めて歩行者と見なされる」……しーん。国土交通省の性格の悪さが非常によくわかる例である。普通の常識で考えてし まえばこれは○だ。しかし答えは×なのである。これは難しい。はっきりいってとても解けない。何も対策していかなければ、誰もが落ちる難攻不落の試験だ。 しかし、しかしだ。みんな受かっている。会場の80%は受かる。どんなヤンキーでも暴走族でも受かる。それはなぜだ!?それはひとえに、「それにそなえた 対策をしている」からだ。それはどんな対策だ?どんな本屋でも売っている「自動車免許取得試験の過去問題集」を解いてから受けに来ている、ということなの だ!!あの本を一目見ておけば、本当にほぼ「同じ」問題が実際の試験にも出る。だからどんな意地悪な引っかけ問題でも解けるのだ。

しかしだ。逆に、過去問をまったく解かずに試験を受けに来ている人間は、必ず落ちる。あんな試験で点は取れない。真っ白な頭で常識的に解いたら、 必ず引っかけ問題に引っかかるようになっている。これは「真の頭の良さ」や「真の学力」にはまったく反映しない。現に私の同級生で、クラスで一番頭の良 かったT君は医学部2年生だった当時、自動車免許試験に落ちた。どんな馬鹿な暴走族でもヤンキーでも(車に乗りたいから)免許の試験だけは必死こいて勉強 し、そして通してくるのに。T君は落ちた。なぜだ。T君がヤンキーより頭が悪かったと思うか?

そんなはずはない。

あまつさえ、彼が車に詳しくなかったわけでも、運転が下手だったわけでも、一般常識が足りなかったわけでもない。「20%しか落ちない簡単な試験に落ちるなんて、Tって奴、すげぇ馬鹿」と君は思うか?あまり思わないであろう。彼はただひとえに、試験に備えた「特殊な対策」をしていなかった=過去問を見ていなかっただけなのだ。

国家試験もそれと同じである。みんな勘違いしては駄目だ!!駄目だ駄目だダメだ!!医師国家試験に必要なのは医学の知識ではない!!真の頭の良さでもない!ただ「特殊な対策をすること=過去問を見ておくこと」なのだ!!「90%合格する、日本一簡単な資格試験」と人は言う。しかし、何も対策をせずには、一問だって解けやしない。教授にだって解けやしない(自分の専門の分野以外)。

必要なのはただ、過去問を解いておくこと。さぁそこの君、こんな雑誌立ち読みしてないで今すぐ過去問を見なさい。手に入れなさい。医学教育出版社のじゃなくてもいいから、98回過去問題集を買いなさい。

そして次号はパンダ式・過去問のとき方だ!

※「受験は、自転車免許の試験と同じ。」この元ネタは、マスコミに頻繁に登場なさる精神科医・和田秀樹先生の名言である。この言葉自体は、大学受験 において使われたものであるが、医師国家試験こそ、これが当てはまるとねじ子は思う。和田先生のことを何かととやかく言う輩も多いが、ねじ子はこの方の受 験指南書がなかったら医学部に受かっていないので、足を向けて寝られない。