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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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おたく活動日記 サンプラザとブロードウェイが私の魂のすみか

2019年初頭はルパパトの興業ばかり見ていた私の久しぶりのハロプロ現場は、2019年5月6日中野サンプラザJuice=Juice通常公演であった。10日間という長いゴールデンウィークの最終日だ。私はハロプロという大きな潮流の戻り鰹であり、またこの地に帰ってきた。

このツアーのラストに武道館で宮崎ゆかにゃ卒業公演が行われることもあり、新しい(と思われる)ファンは少なかった。会場は「歴戦の戦士」感が強い中年男性ばかりであった。ライトユーザーはおそらくみな、この後の武道館へ行くのだろう。

中野サンプラザの赤い絨毯が敷かれた2階ロビーはいつも我々を包み込んでくれる。変わらぬたたずまい。いつもの安心感。談笑するおたくの皆さん。男子トイレの長蛇の列とガラガラの女子トイレ。そう!そう、そう!この感じ!(突然のリュウソウケン)この感じだよ!!私が最もハロプロを愛していた13年前のハロプロと同じお客さんが、そこにはいた。私は時空が戻って歪んだようなめまいと、少しの安心感を覚えた。

そして公演を見終えた私は思った。「金澤朋子座長公演だ」と。少し目を離した隙に朋子のパフォーマンスが向上してた。センターポジションで歌う場面も多く、どっしりとした安定感があった。もちろんJuice=Juiceのセンターはかりんであり、卒業公演はゆかにゃが主役になるに決まってるんだけど、今日はなんだかひときわ「金澤朋子座長公演」に見えた。座長の風格だ。かなともにそんなものを感じたのは初めてだった。

彼女は病を抱えながら、歯列を整え、さらに歌が伸びた。目を見張った。だってかなともは初登場時から非常に歌がうまく、3年ほど前にはすでに歌が最高に上手い、いわば「安定した」状態だった。素人の私にはもうこれ以上の上がり目は想像できなかった。正直「もう伸び止まっている」と思っていた。彼女を見て感じる感情は「成長」ではなく「安定」だと。それでいいのだと。ところが彼女はさらに歌が上手くなっていた。凄みが出た。こんなに成長するとは思っていなかった。朋子は現在サブリーダーであり、おそらく次期リーダーになる(このときはまだ発表されてない)。立場が人を育てるということだろうか。

まぁ私は結局かなともが大好きだから、コンサート中もずっと彼女を見てしまう。『イジ抱き』サビ明けの「たんたんたん、カッ!」の部分で、毎回かなともが画面に抜かれるじゃないですか、三回が三回とも。スイッチャーさんもわかってるからね。三回が三回とも最高の顔してるんだよね。かなともの色気にあてられて、私、会場出てからずっと顔が赤かったもの。なんだか体がぽかぽかしてた。いやこれは会場がひどく暑かったのに水を忘れてしまったからか?熱中症かな?帰り道は「かなとも最高だわ!朋子が『私はローズクオーツ』って歌ってくれる限り私はあなたを見に行く!」と呟きながら、意味もなく一人で自宅までの長距離を歩いてしまった。街路樹のツツジは満開であった。

Juice=Juiceちゃんたち、いますごく良い。全員が自分の長所を出せている。弱点がない。2019年5月に私は確かにそう感じた。全員がいい、全員が好き。アイドルユニットがそういう状態になる瞬間って実はとても珍しいんだよ。今どきのアイドルはすぐに加入と卒業を繰り返して変化しちゃうから。この感覚は娘。14以来である。

何が良くて何が自分の心に響くのか、画面越しではわからない。現場に足を運んで自分の目で確かめないといけない。インターネットのみんなが信じている事象が正しいとは限らない。自分にとって大切なものは、その目で確かめに行かないといけない。実際に診察していない患者さんについてコメントをすると、判断を誤るのと同じだ。とにかく自分の目で直接見ずに、物事を語ってはいけない。「誰もみんな 信じている『真実』それだけが正しいとは限らないのさ その目で確かめろ!」って桜井侑斗も言っていたしね。あ、ねじ子の一番好きな仮面ライダーは仮面ライダーゾルダと仮面ライダーゼロノスです。シリーズとして一番好きなのは仮面ライダー龍騎と仮面ライダーオーズです。

話がそれた。この日、私のすごい近くの席にとても美しい女性客が座っていた。関係者でもおかしくない席だったのでねじ子は彼女の顔をちらりと見た。関係者席にはハロプロメンバーやその家族が来ていることが多いからだ。おたくである私には「ハロメンまたはその家族ではない」ということだけはしっかりわかったので(なんでわかるんだよ)「いやー、最近の女ヲタさんはおしゃれな人が多いな!」とのんきに思っていた。帰宅後、実は有名な俳優さんであったことをネットニュースを見て知った。

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よく読んだらどんなハロメンよりもよほど有名な方のようだ。うーん、ハロプロドラマか特撮かテニスの王子様のミュージカルに出てくれないと、ねじ子には役者がわからぬ。

そしていったん認識すると、彼女の出ているCMやポスターやプロモーションがちまたにあふれていることに気が付く。私がCMを見ながら「わたしこの方のすげー近くで一緒にコンサート見た、まったく気付かなかったけど」とふと呟いたら、長男は笑いながら「魁利くんが49話で言ってたことは本当だったんだね!堂々としていれば『案外ばれないもんだって』」と言っていた。この世のすべてを特撮から学ぶ正しい姿である。

ハロプロの観客は結局ステージしか見ていないのだ。ステージに女神が続々降臨しているというのに、客席を見ている場合ではない。彼女は「ごくありふれた」ハロプロの女オタクとして現場にたたずんでいた。まわりの客も誰一人騒いでなかったし、誰も気に留めていなかった。私のように全く気がつかない鈍感な人ばかりでもないだろうに。ハロプロの歴戦のおたくたちは優しく礼儀正しい紳士淑女ばかりだと感じる瞬間であった。実は1月のサンシャイン池袋噴水広場での『微炭酸』リリイベの際も、見知らぬジューサーの紳士にふいに親切にしていただいて、私は平和と幸福を感じていたのだ。まさに「道行く人が親切だった うれしい出来事が増えました」である。歴戦のJuice=Juice familyはいい人達ばかりだと私は思っている。

『ひとそれ』以降、J=Jにもいよいよ女性新規客が増えてきた。それもまた今後が楽しみだ。わくわく。朋子リーダー、さゆきサブリーダー就任おめでとう。(2019/6/12)